番外章(三)
└六
三、結
青い空はいつの間にか薄暗い雲がかかっていた。
弥勒くんと腰掛けていた土手を、少し冷えた風が走る。
「…え?」
風が揺らす草が、さわさわと五月蝿い。
でも、それ以上に自分の鼓動が妙に軋んだ音を立てて耳に響く。
「…俺、いつからか感じてたんだ…丘に来るときの結から流れてくる空気が段々変わってた」
「…………」
「人間てゆーか…何かもっと…」
…弥勒くんは何を言っているんだろう?
誰のことを言っているの?
誰かがそばにいた…?
弥勒くんじゃなくて?
"君のそばに、いてあげる"
―ずきんっ
「……っ!」
誰かが、そばにいた。
私のそばに。
「あ、あぁ…っ痛……」
「結!?」
思い出せそうなのに、酷い頭痛が邪魔をする。
まるで全身が心臓になったように、脈打つたびに痛みが走った。
「あぁ…っ!」
「結!もういい!いいから!!」
視界が揺らいで目を開けていられない。
"君が独りぼっちにならないように"
「あぃ…っだ、だ…れ…」
"君の、そばにいてあげる"
「う…っ」
一瞬浮かんだその姿は、白く靄がかかってはっきりとは見えない。
「結…!!」
体が傾いたと同時に、力強い腕に抱き止められた。
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