■四巡+チコニア
「あのさあ、今月もう2人目なんだけど。ペース早くない?」
「たまたま重なってしまって。この時期寒くなると何故か一気に崩れることがあるんですよね。」
「何でも良いけど、頭がパーの肉奴隷ばっかり困るんだよね。四巡のはモノ自体の質はいいけど、表から落としてる分、足が付きやすいんだからさ」
「一応、自発的に失踪してもらってますよ?」
「それでも面倒事は少ないほうがいいんだよ。無節操馬鹿野郎。まぁいいや、そこに繋いどいて。後はいつも通りにしとくからもう帰っていいよ」
「よろしくお願いします、チコニアさん」
「僕にまでその口調、気持ち悪いんだよバカ巡」
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・ノアが一方的にボコられ描写
ノアールへと牙を剥き出し唸る異形の男の中で練りこまれた力は瞬きの一瞬で弾け物理的な距離を詰めた。
男は姿勢を低く保ち四肢で地を蹴って懐に入り込み、目があったその刹那、男の右腕が振り抜かれて、ノアールの正面から胸を貫いて背に生える。
突き抜けた拳には血に染まった肉塊が握られていた。
びくりと手の平の中で痙攣するそれは体に血液を巡らせる重要な器官。
大きな衝撃に体を揺らし、ノアールはけほりと血を吐く。
何もかも構うことなく獲物を貫き留めたまま異形は血も滴る新鮮な臓物へと喰らいつく。
鉄の臭い立ち込める中ぐじゅりと体の一部が咀嚼される音を間近で聞き紫色の瞳を彷徨わせる。
取り込むための食事という即物的な儀式に、魔力を奪われ、仮にも源の象徴を食われることで急速な生命力の低下を感じ取る。
「やってくれる」
忌々しげに呟くと、霞掛かる意識を直ぐ様切り替え、食事に夢中の男の胸を強く押して突き飛ばした。
不躾な男な腕を体から引き抜くと、ノアールは飛び退る。
距離を置くと地に膝をついて、胸の穴に手を当てた。
熱い滴りを楽しむ日の如く肉を噛み締め夢中で食んでいる男からは視線を逸らさず、確かめるように傷を指で辿る。
胴に空いた傷からは血は流れずそこには抉れた肉があるのみだ。
ノアールは口内を満たす血を吐き出すと唇を拭い血の紅を引く。精気の失われつつ在る青白い顔に、微かに笑みを掃いた。
「悪食め。……浅慮な」
食事を愉しむ男へと憐れむように、悲しむように、嘆くように、吐き捨てる。
「食らうということは、己の一部に取り入れるということ。受容し、包含し、綜合するということ。それが、真にどういった行為であるか」
ノアールは静かに立ち上がる。ノアールの力の一端を暴力的かつ野性的に、原初の理に則して奪い取り、力をいや増して猛り狂う。
咆哮する異形の男。腹を満たした極上の肉と赤い血潮、そこから取り出される力には全能感すらあった。
取り込む度に桁外れの膨大な力が溢れて、体中に満ちて体外へと迸る。
それ故に、新たに得た力に酔いしれる異形の男はノアールの動きに気が付かなかった。
「モノの喰らい方を、教示してやろうではないか。」
ノアールは聞く者凡てがぞわりと悍気立つよくな暗く深く凄絶な声音で宣する。
「身の程を弁えず我の一部を略取したものよ。その力を己の内へと受け入れたのであらば」
食い散らかされた血肉を介して、食うものと食われるもの、二つの存在がせめぎあう。
「くれてやろう。応えよう。総てを摂めてみせよ。」
そうして異形の男に流れ込み、一方的に行われる力の譲渡。
異形の男の様子が変わる。 体の震えが止まり、ぐうと膨れる。何かを抑え込むように男は自身の体を掻き抱く。
内から湧き上がる力は、強大なものであった。急速に膨れ上がり苛む。
しかし、取り込んだしまったものは元に戻らず。
手に入れた物を必死に御して、懸命に己の内側へ取り込み糧にしようとする異形の男の存在ごと食い荒らさんとし、飲み干そうと荒れ狂う。
その苦痛は耐え難く。男は、おおん、と吠えた。
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今日のノアールから一言「お腹壊すに決まってんだろjk」
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・無双5エンパ蜀軍エディットくん
敵兵を斬って斬って、いつの間にか積み上がった屍の上に立つ。男は無様にも逃げようとした最後の一人を斬り捨てて方天戟を下ろした。敵も味方も入り乱れる戦場は、自軍の勝利で幕を下ろそうとしている。
唐突に込み上げた濃い血臭にはっとして、男は己の姿を見返す。装具も、自軍の見分け印である緑の衣も生ぬるい液体で赤く染まりきっていた。両手も濡れてぬめっている。戟を奮っている間は自然と気にならず、柄を滑らせ仕損じることもない。無双の英傑とは、そういうものだ。
必要とあらば、軍師の命、君主の檄に従い、己の考えに基づいて一人で何百人でも何千人でも撃滅する。どんな状況状態であれ劇烈な戦いを行使できる、その力が備わっている。
息をついて辺りを見回すと、死体ばかりだった。自分一人で赴くと言ったのに律儀に付いて来た副官が見当たらない。はぐれたか、それとも、既にもうこの中に混じったか。
「仁の世、か」
この死屍累々の戦場ではひどく滑稽に聞こえてしまう。彼の志す世を目指し、戦をして敵を屠る程に遠くなるようだ。
敵も何も、兵は殆どが敵国の農民ではないか。だんだん境目が曖昧になる。敵が、兵が、民が、塵芥のように思えてくることがある。時折訪れるようになったその感覚は悪霊のように自身を蝕んでいた。
「人か、鬼か。」
自分に問うて、赤く染まった手を握り締める。このような手で、彼らの理想を担えるとは思えなかった。自分のことが陰で鬼神と渾名されていることは知っている。
けれども、彼らは優しかった。俺が鬼であっても、優しくしてくれる。自分が未だ人の心を失わずに保てるのはこの国に居るからなのだろう。
それは幸福なことか、今この状況では分からない。
あるいは、心を失ってただ殺し尽くすだけの鬼神になってしまえば、無意味に揺らぎ苦しまずに済むのかもしれなかったが、この蜀という国は、この劉備という人の隣は、余りにも居心地が良い。だから、鬼ではなく、自分は蜀の籠玄亀でありたいと願う。
遠くで、勝鬨が上がったのが聞こえる。戦は終わった。緑の旗がひらひらと振られていた。
生きてくれていたら良い、死んでいようが構わない。自分を慕い信を寄せてくれた、あの義の心が篤い副官を探そうと決めた。
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水の青の先、視界に入るのは白いラインと真っ直ぐ伸びた自らの腕。
流れを掻く指先に纏った空気の欠片が弾けて細かに散る。
くるくると形を変えて浮上する光を追うように体を仰向け、水中から水面を眺めれば、波の綾と、索漠とした太陽の輝きが写り込んで光を投げかけている。
普段、見慣れて味気無いそれらも薄青く揺らめき、美しいと思えた。
こぽ、と口から泡を吐く。
亜麻色の揺蕩う髪の一房を、泡が絡め取って、連れ去り登っていく。
泡を追いかけて、水面に、指先を伸ばした。
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手折られぬよう目を向けよう。
散らされぬよう言葉を尽くそう。
踏みにじられぬよう慈しみを注ごう。
野花が野花であれるように愛で寄り添おう。
慎ましやかな薄紅の幸せをくれる、貴き色を名に宿す稀有な人。
かけがえない君。
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・ノアとマリア
一度固く結ばれた糸を見誤てば縺れに縺れ、断ち切るに疼痛を伴い意志を削り、解くに膨大な労と時を要した。
編み上げられた苦業の綾に透け見える追憶は惑いを導き解き糺す指すらも絡め捕る。
重なり合う糸が理智を埋める繭となり、微睡みの殻の内に囚われ落ちる。
「忘れてお終いな」
深く響く声は時の澪を遡り記憶を約め嘗ての日々と現在を絎ける。
「おかえりなさい」
抗う術無く惣闇へと孵される戦きすらも奪われ、虚けゆく淵に、せめて、最愛の名を紡ぎ刻み鍵と成す、悟られぬよう鎮め隠した。
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・OG→?
愛、なんていう人間の情動は壊すも奪うも利用するのも七面倒くさい円環構造を時として創り上げる。
「本当に、困った」
狂う余地も残されず、哄笑すら防遏され。途方に暮れ不運に嘆く位しかやるべき事が思い浮かばない。
そもそもは醜類に牽けば幕引きであったのに、こうも尽く全てを呈出されては遊戯としても流れないではないか。
円み柔いだけに愛は不可侵の情景を描き恬淡とするなど、彼女に最強の矛と盾を授けたのは一体全体誰だろうか?
「まさかこのオレが、たった一人の女の子に自業自得の終曲を、だなんてね」
一寸の躊躇いなど、許より不確の凝りの己にはもう期せぬ筈でそんな事実が在り得ては…
「笑えない。祓われてしまう」
鬩ぎ合う厭悪と好情の崩壊は、存在をも揺蕩とさせるだけの力を持つのだから。
それでも止められず隠し持つ真実から溢れる色を持たない愛の汚濁。
「ああ。とけてしまいそうなほどに」
君だけを愛してしまう
■
・OG
幸せが、不幸が、周りの出来事全てが誰かに仕立て上げられたものかもしれないと恐怖したことはないかい?
人はそれを運命だとか、偶然だとか神の意志とか呼ぶけれど、一ついいこと教えてあげようか。
君はオレに仕立て上げられた楽しい舞台の上で踊る可愛い人形なんだ、美しい役者なんだ。
オレの指先一つでその幸せが終わる。
前触れなんか普通無いけど君は特別。
ね、たった一人の"人間"に人生を支配されていたと思い知った今の気分はどう?
嬉しいも悲しいも全部が嘘で本当。
「これは夢かも」
何て思っていたのは実は当たり。これはオレが君に見せた現実の夢。
もう何だか嗤うしかないだろ?
糸の切れた廃棄人形さん、台詞の無い大根役者さん。
今度はオレみたいなのに騙されないように全てを疑って生きるんだ。
狂ったように再び笑い出した、それが君の産声。人間としての初めての歌声。
さあ生きてごらん!
■
ただ「好きだよ」って言って「夢じゃないよ」って抱きしめてくれたら、良かったの。
ちゃんと教えてほしいだけだった。
一度でもそうしてくれたなら、私はこんな風に、貴方の気持ちを疑い試し確かめずに、済んだのに。
■
殴り蹴って引き倒した。
嫌いとか楽しいとかそんな感情もなく、そうしたいからした。
酷い事をしているという他人事のような感想はあった。
彼はそれでも起き上がり膝立ちに、請うみたく私に腕を伸ばしてくる。
ゆっくりにじり寄る体を強く突き飛ばす。
座り込んだ彼を見下して言う。
「私に触らないで。」
■
彼の喉へと、再び手を伸ばす。
先程の痣をなぞるように手の平を首筋に這わせると、嗚咽で激しく上下する喉が痙攣を起こしたようにヒクついた。
「ね…苦しい?」
ゆるゆると腕に力を込めれば、彼の瞳から涙が流れ落ちた。
空気を求めるようにして突出された赤い舌に、釘を貫通させてやりたい衝動に駆られる。
■
・ももちゃん
「女の子になったって話、本当だったんですね」
全身を強ばらせ悲鳴もあげられずに組み敷かれている彼、いや、彼女からは、それまでの小憎たらしさは消え失せていた。
震える声で「誰から聞いたの」と蒼白になって尋ねる彼女にたわいもない、よく考えればすぐにバレる嘘を一つ。
「ネットで流れてるのを見て八代くんに確かめたら、そうだって」
ネットも八代に確かめたのも嘘。
後ろ姿を一目見ただけで四巡には彼に訪れた異変が分かった。
「嘘だぁ…ッ」
余程恐慌に陥ったのか言葉に力はない。
覗き込んだ百瀬の瞳の奥に微かな絶望が灯るのを見て、四巡は笑みを深め衣服に手をかけた。
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・あーたんまじっく(猫市←カルラ)
体が熱くて頭が朦朧とする。
あちこちで抱き合う同級生を見て、とても恐ろしくなった。
私も、誰彼構わず、求めてしまいそうだ。
でも、でも、私は…熱に浮かされる体を引きずって、あの子の姿を探し求める。
あの子以外は、嫌。触られたくない触りたくない。
探し歩く間、誰かに誘われるたびにギリギリと理性が奪われ行く。
振り切って走る、弾む息が、心を裏切る体が苦しい。
そして漸く、事態に唖然と立ち竦む彼女を見つけ背後から近づいて、腕を掴んだ。強く強く。
「猫市、ちゃん」
やっと見つけた。
「カルラちゃん…?」
お願い、助けて、私には、貴女だけ。
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・ノアール(IF)
「百年、か」
花を手向けてはその日を待つ。
決して苦ではない、けれど。
「……永いな」
風に吹かれて白い花が笑うように揺れた。
久遠のようであり刹那のようでもある年月はただ静かに流れゆく。
■
見つけたのから順番に乗せてます。
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