私より少し大きいぐらいの子をお祖母ちゃんが家に連れてきた。
お祖母ちゃんに手を繋がれて無表情に佇むその子が、私は少し怖かった。
白に近い銀色の髪の毛と白い肌。
子供らしいふっくらした頬が薔薇色に色付いていた。
なにより驚いたのはその瞳の色で、綺麗な紫をしていた。物珍しい、学校で育てたヒヤシンスを思い出す綺麗な色。
もっと良く見たくてじっと見つめるとその子の眉が顰められた。
それは一瞬のことで、また無表情に戻る。
でも、見つめ合う、その綺麗な色の瞳で鋭く睨まれているような気がする。
じろじろ見るのはいけないことだった。ごめんなさい。
「ほら、挨拶は」
身を竦ませて父さんの足の後ろに隠れる私に母さんが促す。
「…こんにちは、お祖母ちゃん。それと」
「この子はノアール。これから一緒に暮らすのよ」
お祖母ちゃんが言う。
それじゃあ今部屋を使ってるぬいぐるみさんを片付けなくちゃ。空いた二階の寂しい部屋が怖くて嫌だったから、ぬいぐるみが部屋の主だ。誰かが来て埋まるのを大きなクマさんと一緒に待っていた。
家に人が増えるのも、賑やかになっていいな。兄弟が増えるみたいで嬉しいな。
ノアールと呼ばれたその子に少し緊張しながら会釈をする。
「ノアール、くん。こんにちは」
「こんにちは」
返された挨拶の言葉は何かを撥ね付けるようにぴしゃりとしたもので、やっぱりちょっと怖いなぁと思った。
でも、今度は視線を逸らさなかった。これから一緒に暮らすのだったら仲良くしたい。
ノアールがお祖母ちゃんを見上げる。
「これがお前の孫娘か」
「そうですよ」
「利発そうな子であるな。お前の後継に据えるのか」
「それはこの子が決めること。たとえ、継がずとも、きっとノアールと良き友人となりますよ」
「…だと、良いがな」
難しい言葉を使う、なんて言ったんだろう。後でおしえてもらいたいな。
首を傾げるとノアールくんがふと、微笑む。
「よろしく頼む」
手を差し出される。
ああ、握手だ。
「よろしくね」
握って私も笑った。
2011/01/07
カルラ家に、家族が増えた日。
ノアールとカルラは幼なじみみたいな家族みたいな。
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