【キャラ化学】ノアール×紫くん


「これを、咥えればいいのか」

こく、と頷いた。頭を傾け、菓子の茶色い部分に舌を伸ばし口に含む。
何か気恥ずかしいのか紫は顔を赤らめ目を伏せた。

「…。」

紫とは接吻、それ以上の事も幾度か重ねているというのに彼は慣れないらしい。
おかしなものだ、と目を細めて何処か必死な紫の表情を眺める。

それで、どうすれば良いのか。

じわりとチョコレートが口内で溶ける。
紫の固く閉じられた瞼が震え、もう耐え切れないとでもいうように目がそっと開かれた。

視線がかち合う。

「ぅ…」

たじろいだ紫に、菓子が軽い音を立てて折れた。

「…?」
「違う、ノア君、食べ進めてくれなきゃ」
「そうか。では今一度」

口に菓子を咥え紫に迫る。
紫が咥えたのを確認すると菓子を食んだ。甘い。
削られ行く菓子に互いの距離が縮まる。

ギリギリまで食べつくし最期の一口。

チョコレートに濡れた唇が触れ合った。軽く舌で舐めとり唇を離せば、紫がまた赤くなった。心なしか瞳も潤んでいる。

「…これがゲームか」
「…うん」

「面白い。紫相手では特に緊張感も嫌悪感も無いが。あと二本残っている故続けようか」
「?!!」

何をそんなに驚く。

菓子を摘むと紫の口元に運ぶ。

「咥えろ、紫」

僅かに口角を上げて言えば、紫は黙って咥えた。
行為を繰り返す。

菓子を食べきり唇に触れる。今度は唇を啄むように吸った。段々と深くなる。

甘すぎる、互いに。
吐息が熱い。

「菓子が口触りだな」

ふとおかしくなる。
趣旨からズレている。

「終いだ。中々楽しめた」

最期の一本を摘む。

「それ食べちゃって良いからノア君、もう一回」
「途中で折れた場合接吻は本来見送りだが?…次のゲームの結果次第で考えよう」

では、続けようか。妖艶に笑んだ。





11月12日
BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
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