玄関に続く廊下を駆けて行く足音。
ひょいと廊下へ顔を覗かせるとそこにはいつもの制服姿ではない私服姿のカルラが立っていた。
「あれ、何処か行くんですか?」
「うん、ちょっと待ち合わせしてるの」
玄関でとんとんと靴の踵を鳴らして玄関の横の姿見で最終チェックをしている。
身動きする度に少し丈の短いスカートが揺れた。
「そんな服持ってましたっけ…可愛いですね」
何気なく思ったこと口にしたら、物凄くびっくりした顔でカルラがこちらを振り返った。
「四巡…!?」
「あ、あれれ?なんですか、変なこと言いました?」
「うん…!四巡が体がどうとかじゃなくて、服を褒めた…!」
「え」
「大丈夫?本当に四巡…だよね?」
なかなかに酷い言われ様である。
本人かどうかすら疑われるレベルなのか…。
けれど指摘されて気が付いた。
「確かにらしくないですね」
いつもならばスカートから伸びる脚とかベルトできゅっと締まった腰とかいつもより大胆な胸元を褒めただろうに。
何故だ、何かが違ってていつもよりおかしい気がする。
うーんと腕を組んで考えていると、カルラが鞄と靴を玄関に放り出して悩める四巡の側にやってきた。
「熱ある?」
「無いですが」
「変なもの食べた?」
「購買で買い食いはしましたよ」
「……うん、何ともないなら良いや。褒めてくれて…ありがとね。四巡に褒められる位なら自信持って出かけられる!」
にこーっと至近距離で笑顔をくらう。
熱はないが目眩がした気がする。
カルラはすぐに身を翻して玄関に戻って行く。
その背に向けて無意識に腕を伸ばしていた。
思わず、行かないでほしいと手を掴みそうになったのだ。
引き止めてどうする。
「……。」
「それじゃ、行ってきます」
「え、ええ。…行ってらっしゃい。気をつけて」
そんな普通の一言を口にするのがちょっと苦しい。
ぱたんと扉が閉まってカルラが行ってしまってから、大きくため息を吐いた。
何かがいつもとは決定的に違っていた気がするがよく分からない。
身体ではなく彼女の服を褒めた自分。その意味。
「……まあ、いいか。」
四巡は本当にらしくないなと苦笑する。
明日ネタにされそうだなぁと、ぼんやり思いながら自室に足を運んだ。
2015/09/30
貴重な四カル風味