猫市さんが嗤殺化で書いてくれた「敵をだますにはまず味方から 」の続編(?)となります。
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私は知ってしまった。
あのDVDの保管場所を。
先日、襲さんが仕掛けた罠にまんまとハマった私は、恐ろしい経験をした。
色気ムンムン、信じられないくらい悪いオトコの表情をした猫さんにAV女優を演れと迫られたのだ。
抱きしめられて彼の腕の中、煙草の残り香が甘くかおる。必死の抵抗は非力な女のもので、抵抗なんてものはなんなく往なされた。
服を脱がされかけて、恐怖に粟立つ肌が彼の視線に晒される。胸元に顔を埋めた彼は柔肌に吸い付いた。
強く吸われてチクチクと痛み、解放された時には赤い痣をつけられていた。
満足層に口元を歪めて行為を続けようとする。これが嘘や冗談ではなく猫さんの目がマジだと気がついた所で、私は血が登ったのか引いたのか、不覚にも気を失い…。
後のことは、わからない。わからないというか、積極的に分かりたくない。
夢だったら良かったのに、胸元につけられた赤い印がそれを許してはくれなかった。
服で隠してしまえばそれまでなのに、コンシーラーで丁寧に消したのは、一種の現実逃避であろう。
実際にヤられた記憶はないため確信はもてないものの、無様な姿を晒したのかもしれない。
もしAV撮影がどうのというのが本当ならば、女として致命的。
いや、猫さんに挑むのに障害になるに違いない決定的なシーンを撮影されてしまっている。
次の日、猫に呼び出されて、差し出されたものがある。
私と非常によく似た女性が淫ら過ぎる姿でパッケージを堂々飾る一枚のDVDケースだった。
…受け取ったときは、死ぬかと思った。
というか、実際、人として大切な何かを失った気がする。こう、尊厳的な何かを。
猫を打倒するまでと懲りずに続けてきた私と彼の仁義なき攻防は、あんなものがある限り、彼にずっと王手をかけられてしまっている状態だ。
私の神経が図太ければそんなものに屈しはしないが、これでも、か弱いただの女である。
DVDをばら撒くぞと脅されては手も足も出ないではないか……。
そう、この状況をどうにかしなくては、私に明日はなかった。
そんな中で掴んだDVDの保管場所。
それは、猫の自室だという。
幾重にも張り巡らされたセキュリティを破って潜入し、奪取して、何としてでもこの世からアレを消し去らなくてはならない。
このミッション、腕がなる。
やる気になった私に、出来ないことなどないのだ。
そして。
勢い勇んで部屋に入り込んでブツのマスターらしきモノを見つけたところまでは良かったのだが。
何故私はあの時、情報元を疑わなかったのか。
先日の襲さんの件もあったのに!
「飛んで火に入るカワイコちゃんっと。」
ガチャンとわざとらしく音がなって内側から頑丈に施錠される扉。
狙ったように降りて窓を塞ぐシャッター。
退路が一瞬にして絶たれて青ざめて固まる。ギギギギギ、と無理矢理首を動かして背後を振り向けば、暗がりの中から現れたのは、部屋の主の猫だった。
「どうやってセキュリティを破ったのかは、後からたーぷり時間をかけて聞き出すとして、だ。」
猫が未だ動けない部下に悠々歩み寄り背後に立って、部下の苦労をねぎらうように、肩にポンと叩いた。
そして腰を屈め、耳元で低く囁く。
「俺の自室に入り込むってことは、どーなるか分かってるよな?」
ガッチリと掴まれた肩に身動きができずにへたり込む。
頭の中では【ゲーム・オーバー】の文字が極彩色でけたたましく回っていた。
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2013/04/08
エロまで長い。