【カルラちゃんと影ちゃん】


影の触手がカルラの前に伸びてくる。
見つめていると、そっと頬に触手は添えられ、器用に撫でる。

「っん、影ちゃ……」

するりとした感触にカルラは頬を染めて俯いた。
その影の行動によって、カルラの脳裏に過ぎったのは猫市の代わりに“食べられる”時のこと。

与えられ続ける純粋すぎる快楽。
深く激しい絶頂の末に訪れる、忘我に揺蕩い、ダメになってしまいそうな多幸感。

捕食の回数が重ねられるその毎回、影は行為の最中や食事の終わった後、欠かさず労い慈しむようにカルラの頬を撫でる。
その影の行為に、喜びのような安堵のような愛情にも似た何かを抱いてしまう。
微かな優しさを見出してしまって、たまらなくなる。
酷いことをされている筈なのに、どうしようもなく許してしまうし、次の悦楽を期待してしまう自分に気付かされる。
どきどきとして、体が変になる。

影にそっと手を引かれ、カルラはそれを拒絶することはできなかった。




【ノアとイリューくん】
ちょっとお下品


「イリューよ」
「なに」
「いつぞや、処女童貞宣言を聞かされた折より疑問に思っていたのだが。機能はするのか」
「き、機能とは」
「む、もう少し仔細に訊ねねばならぬか…その体に備わっているであろう性器は性行為に使用可能か?あけすけに言えば勃つのか?」
「たっ……!?」
「どうなのだ」
「………し」
「し?」
「知るかあああ馬鹿ああああッ!!」

この後ノアールはめちゃくちゃ好奇心湧いた。



【カルラ+影ちゃん】
・形にまつわる話。

「そっか、影ちゃんは何にでもなれるんだね。猫にもなれるし、触手もそうだし…?」

変身には質量なんかも関係なさそうだ。だったら、もっとこう、体液を摂取するのにもっと適した形に進化しそうなものだけど、とカルラは思う。
例えば、体液を摂取しやすいように人間の体に入ったままになるみたいな。
そこまで考えて影の触手が目に入る。
それから、親友の顔が浮かぶ。
そしていつか何処かで習ったサナダm……

「いやあああ!影ちゃんはずっと今の影ちゃんのままでいてね!」

カルラは嫌な想像を振り払うように小さく叫び、突然なんの事やらと赤い目をぱちくりとさせる影の頭を掻き抱いてぎゅーっとした。
ああ、影ちゃんが人間に親しみやすい形で、本当によかった。




【猫市ちゃん+カルラ】
・カルラちゃん片思い前。

「それで私が拗ねたらね、仕方ねえなって文句言いつつもう一個買ってくれて、二人であーんして食べちゃった。美味しかったよぅ!」
「そ、そうなんだ、へぇ…」

その話だけでお腹いっぱいだ。
幸せそうに笑ってメロメロオーラを振りまく彼女にらぶらぶデート?の仔細を聞かされたカルラは相槌を打つ。
そろそろ相槌のレパートリーがなくなってきた‥と焦りながら、
いつか私もこんな風に誰か特別な人との思い出話を幸せいっぱいな顔で他人に語る時がくるのかなぁと思うと、少しだけ不思議な気分になる。
想像が、つかない。

「ね。いま幸せ?」
「もっちろん!」

そう友人は淀みなく答える。
だから、私もいつかその時がきたら、うんざりするくらいに惚気てやろうと心に決めつつ、また彼女の話に耳を傾けるのだった。
そんな人に出会えたらいいな、と思いながら。




【カルラちゃん+猫市殿】

「ねえねえ、ちょっと聞いていい?」
「なあに、カルラちゃん」
「猫市ちゃんの異性の外見の好みって」
「ん?」
「もしかして影ちゃん?」
「えっ、な、なんで?」
「猫市ちゃんの深層心理を読み取って影ちゃんの姿はああなったのかなって」
「違うよ?」
「だよね、猫市ちゃんは細マッチョだよね」
「!?」




【四巡+猫先生】※お下品

「水泳の授業休みます。見学します。」
「理由はなんだ?どっか怪我でもしたか?」
「男女混成、薄布一枚、水中という不自由な環境で躍動する若い肉体を目の前にして、自分と愚息を抑えきれる自信がありません。と、正直にカルラさんに相談したら、腹パンと共に見学しろって」
「……」



【鏡藍先生+カルラ】※嗤殺寄り
・はれた

声を荒げるでなくいつも通り、普通。驚くでも、警戒するでも、怒るでもなく、平常。
困った生徒を優しく諭すような声がカルラの耳朶を打つ。

「カルラに、アレを見られてしまったか。仕方ないな」

彼女が切り出した話題にそぐわない声音での、一切の否定がないその返答。
カルラは体を強ばらせた。

「……先生が事犯人だなんて思わなく、て……私は!そんなつもりじゃ……」
「では、どんなつもりだった?後をつけて、秘密を暴いて、」

一歩また一歩と近づく鏡藍、瞳に赤色に射竦められカルラは途中、言葉を失う。

「ましてや、知ってしまったという事実を、隠していた当の本人に告げる……」

堪え切れずといったように鏡藍はクスリと笑みを零す。
保健室で見かける穏やかな笑みとは異なる、酷薄さを際立たせるその表情は、彼にとてもよく似合っている。

「どうなるか想像もしなかったのか。例えば今ここで、目玉を抉られ殺される、などとは?」

そう言って彼女の頬に掌で触れ、瞼に指を掛けた。




【闇堕ちカルラ+ノア】
・彼のためにとっておきのプレゼント:狂気END

「ねぇ、ノア。お願いがあるの」
「…反吐が出る、いつからそのように惻隠の欠片も映さぬ洞な瞳をするようになったのだ、カルラよ」
「私は変わってないよ?それにしてもノアの目、いつ見ても、とっても綺麗だね?どうしても欲しいのそれ」
にっこりと微笑む彼女の手には鋭い銀光があった。



【四巡+猫市殿IN影ちゃん】

「うぅ、やだぁ、ダメだよ…他の人にしてよぉ」とグズっていた猫市を無視して、白衣の下から顕になった白い太ももに手を這わせていたら、泣き声がいつしか止まって、するりと彼女の華奢な手の平が重なり、さらに奥へと誘い込まれる。
「積極的ですね、」と彼女の顔を見る。怪しく赤く輝く瞳があった。
その細い体に能わぬ剛力で身体をすくい上げられて引っくり返される。

「ごはん」

猫市の喉から搾り出された平坦な声に四巡は口の端が引き攣るのを感じた。

「あ、ちょ、やめ、そんな、アッーー!!!」 

※攻略失敗



【カルラちゃん+梓帆ちゃん】

耳の奥へ囁き吹きかけられた言葉が脳へと溶ける前に、声にぎょっとして振り返った。
笑みを刷く彼女とブレて”恐ろしいもの”が重なって見えて目を擦る。

「どうかしたの?」

先輩は首を傾げる。

「い、いえ」

固い声音で否定し、彼女の囁きの反響から逃げる様に踵を返し、今此処に居ない友人の名を呼んだ。





【四巡+??】

「触れてもいいですか?」

吐息混じりの掠れ声に、ぼんやりとして身を任せていた彼女が目を瞬かせる。

「だめ」

いやいやするように頭を振って体を這う彼の手をやんわり払う。

「本当に?」

重ねて意地悪く尋ねれば、彼女は赤い顔をして目を逸らし「きかないで」小さな声でそう言うと、瞼をぎゅっと閉じた。



【猫市殿+カルラ】R15百合

「やっぱり駄目、行かせない。猫市ちゃんをあんな風にひどく扱う人になんて、任せられないよ」

後ろから抱き竦められて歩みが止まる。
この前、騎士くんと教室でシてるところをうっかり見られてから、カルラは猫市を心配しており、
猫市自身が大丈夫だと言っても影ちゃんもいると言っても頑なだった。
見られてしまった。ちょっとした出来事、見られたタイミングが悪かっただけで、いつもはそんなじゃないのだ。
彼女は分かってくれないけども。

「だからね、それは…」

誤解だと、振り返って何度目かの反論をしようとした唇は、カルラによって柔らかく封じられる。
移る、彼女の甘いリップクリームの香り。

「……っ」
「ねぇ、猫市ちゃん。…気持ちいいコトが必要なら私がシてあげる。女の子とでも、できるよね。…だから。だから、行っちゃやだ…」
「カルラ、ちゃん」

ぎゅうっと白衣を掴んでいる手を、猫市は振り払うことができなかった。



【イリュー君+ノアール】
・ともだち

「イリュー」
「んん?」
「まずは疑問を封じ込め、素直に口を開けるがよい」
「え?あ、うん、はい…?あーん」
「うむ、宜しい。お努めご苦労(開いた口へ飴玉放り投げ入れ」
「はふ…っ!?」
「今回はレモン味だそうだ。また期を見てやろう、励め(肩ポン」
「何これ、どういうことなの(美味しい」



【カルラ+イオスさん】※こらぼ
・連れ去られネタ

チョコレートの香りに塗れて酩酊感。
ふわふわと頼り無い視界の中、赤い光が揺れて白い衣が翻り、その眩しさに目を細め…気付けば微かな薬品の香りに包まれていた。
頬を誰かの黒髪が擽る。

「…ぁ…?せん、せ…?」
「うん、先生だよ」

曖昧な違和感。
頭の中で人影は2つに振れ、千切れ、混じり合う。
何が本物で本当か、ぐるぐる。

「ーー、ーーからね」

何事か囁かれ、微笑みかけられたとき。
遠いところで警鐘が鳴る、反響する、ひたひたと波のように恐怖が迫る。
けれど、抱き留められた体温の端から、とろり、意識が溶け落ちる。
瞼が閉じられる瞬間映し出されたそれは三日月のように弧を描いていた。




【カルラ+皇先生】※影遊軸

瀕死で皇先生頼ってみるネタ

「せんせ…!先生なら!皇先生なら治せるんですね!?」
「ええ、治せます。さあ、彼女をこちらに」

促されるが、腕の中で冷えていく彼女の身体を手放すことができない。
一度離してしまえば、命が零れ落ちて消えてしまいそうで。
守りたい、守れない?
歯を食いしばりぽろぽろと涙を零す。
そうして強く強くセーラー服を掴む彼女の指に、そっと触れるものがあった。

「大丈夫ですよ」

優しそうに微笑むその顔に、ふと力が抜ける。

「それでいいんです」

崩折れ声を上げて泣きだした彼女は気がつくことはなかった。
にたあと笑う科学者の顔に。 



【影ちゃん+ノア】

「影」

興味関心と好奇心に瞳を爛々と輝かせ呼び止める。

「主の元へ帰る前に…戯れてゆかぬか」

誘いの言葉ではあるが逃がす気も断らせる気も無く、猫を姿をとっていた影は目前に突如現れた障壁に行く手を阻まれ、毛を逆立て声なく唸る。
その小さな体へそろりと手を伸ばして拾い上げ腕の中へ閉じ込めた

※このあとめちゃくちゃモッフルした



【枝菱+カルラ】

(委員会か何かの書類準備で)

「枝菱くん、そこの、ほら、チューブ糊とって?」
「……♪」
「聞こえてない?…おーい、枝菱くんっ!糊!」
「えっあ、は、はひッ(慌てて握りしめ勢い良くカルラちゃんの方へ向く」
(ぶちゅっと絞り出される)
「わっ!(苦笑しながら)…いっぱい出ちゃった、ね」
「!?」



【影ちゃん+猫市殿+カルラ】

「あついーとけるー補習やだー…」
「机の上に溶けるなー!プリント、あと一枚じゃない。頑張れ猫市ちゃん!」
「むーりー…」
「もー、仕方ないな。よし、影ちゃん、この前練習したアレいくよ、さんはいっ涼しくなるポーズ!」
「……(両手上げてひらひら)」
「ナニソレ」
「電気屋さんの扇風機の前についてるヒラヒラをイメージした創作ダンス」
「カルラちゃんもだいぶ暑さでやられてるんだね…」



【猫先生×ノア】

一人の学生が授業中静まり返る長い廊下を遊歩する。
不思議と引き止める者も、教室内で授業を受ける窓際の生徒が彼に気を止めることもない。

漫ろ歩く彼を待ち伏せるようにして、昇降口へと続く階段の踊場にジャージ姿で猫面をつけた教師が立っていた。
生徒はちらと見ただけで淡々と階段を降りる。

普通に通り過ぎようとした不遜な紫の瞳を仮面越しに見ながら、一応教師らしく注意する。

「コラ、サボりはよくないぞ」
「知ったことか」
「悪い子だ」
「生徒に手を出す教師が、よく言う」
「人聞きの悪いことを言うなよ」

薄く笑った学生は、腕を伸ばし白い指で教師の黒猫の面をずらした。

「口止め料はこれでよいか?」

現れた唇を掠め取るようにして触れるだけの口付けをする。

呆気にとられている猫の脇を何でもないように学生はすり抜けた。

「…参ったな」
「暇ならば付き合え、猫。」
「はいはい」

こんなはずじゃなかったのになと教師はつぶやきながらも生徒の後に続いた。





【影ちゃん+??】R18
■影ちゃんに好きな子寝取られてたことが発覚した男の子の一幕(合掌

出来心で要求したことが叶えられてしまった。
見た目はそのままだが影は変化したという。
つまり、ナカが変わったらしい。

何故影が彼女のことを知っているのかということは問うまでもないだろう。
彼女は猫市の友達だ。身近な存在だ。
彼女が食事という行為にこれまで巻き込まれなかったはずがない。

影の食事は鮮烈な快楽が伴う。
彼女は影にどんな表情を見せてどんな風に乱れたのだろう。
何をされて何処まで許したのだろう。ナカへ咥え込んで泣いて善がったのだろうか。

止まらない妄想に心拍が上がって苦しい。
どうしようもなく自身は猛るが、彼女を擬似的にとはいえ味わうことに躊躇ってしまう。

しかし、今更何をと影は焦れて体位を入れ替え乗りかかってきた。
温かな場所が触れ飲み込まれる。
ああ、と溜息が漏れた。

影は彼女に擬したまましどとに滴らせ腰を揺らし痺れるような快楽を誘う。
嫉妬と快楽がないまぜになったまま腰を強く押し付け最奥まで。

瞼を伏せ、彼女を思い描きながら突き上げた。



【ノア+イリューくん】

空間が一瞬ひずみボトリと世界の裂け目から悪魔が落ちてきた。
あちこちに傷を負い満身創痍で襤褸雑巾のように地面に転がっている見慣れた顔。
いくら彼が悪魔であって、現在も世界に化現するだけの最低限の存在を残し、死なないとはいえ、そのまま放置するのも酷かと思う。
どうにかしてやろうと彼に近づいた。
その時。何かが不意に視界を掠めノアールは地面に引き倒された。
存在を捕捉され動けない。

「離せ」

低く唸るが、視線の先でゆらりと膝立ちになった彼には聞こえていないようだ。
炯々と目だけを光らせずるずると体を引きずりながら捉えた獲物へと手を伸ばす。

まずは首。息を止めて命を搾り出せ。

強制的に封じられ磔にされたノアールは顔を顰める。
力尽くでこれを破ってもいいのか。自我を失う程に傷ついている友人をわけの分からぬまま攻撃するのは忍びない。
何か打開策は、と考えている内に呼吸を奪われている。

悪魔は小首を傾げる。
獲物を縊り殺しても何故か命が溢れなかった。

気にくわない。
食わせろ。

飢餓に襲われる悪魔はならばと牙を剥いた。


ずぶりと歯の食い込む感触。唇に食いつかれる。
くっ、とノアールの紫色の瞳が瞠目する。が、抵抗はしなかった。

彼が本気で害をなそうと攻撃しているならばこんなまどろっこしいことはしないだろうと思い至り、ノアールは既に観覧を決め込んでる。

さて次は悪魔らしく血肉を食らうのかとノアールが思いきやその行動は止まった。
噛み付かれた刺激で半開きになった唇にさらに口角を深く合わせ口内へ舌が侵入する。

「……。」

流石にそろそろ止めてやらねば我に返った時の精神的ダメージが辛かろうと、磔を破るために仕方なく力を込めた。

が、次の瞬間、つながった場所から魔力がごっそりと吸われる。

ノアールはぐらりと目眩と脱力に襲われ、悪魔を蹴り飛ばそうかと思った。
相当の量を一度に持っていかれた。
欲しいなら言えば、もしくは分かりやすく示せば、分けてやるものを……。

そしてノアールにしがみついて動きを止めていた悪魔、イリューはもぞりと動いた。
口の周りが血で赤く染まっている。

意識を取り戻せば目の前にノアールの顔。

ポカンとしてそれから、イリューは飛び上がった。文字通りに飛び上がった。
ノアールが「退け」と命ずる暇もなかった。
そしてそのまま土下座の姿勢へうつった。

ノアールは気怠げに体を起こしつつ器用なことをする悪魔をどこか面白そうに見つめている。
額を地面にこすりつけるようにして見事な土下座をとっているイリュー。
帰国子女は日本の文化にも造詣が深いようだ。

「…ごめんなさい」

震え声が絞り出された。
何をしたか自覚したようなので、ノアールはわざとらしくため息をついて、重々しく言い放った。

「次はないと思え。」



【四巡+兎々介くん】

隣のクラスの兎の被り物を欠かさず身に着けている変わり者の彼が、本人でもどうしようもない衝動を抱え込んだ人間、つまり変態で自分と同類(彼は絶対に認めないだろうが、)だと知ったのは、…えーと、何時だったかは忘れたが、兎に角(兎の彼にツノは無いがというか角なんか持たせたら駄目だ、)四巡は仲間意識と興味を持った。それ以来、暇とタイミングがあればたまに兎を追いかけたりしているのだが。

「鬱陶しいっす、なんすかジロジロこっち見て……」

「いえ、面白い方だなあ、と思ってですね。」

「……。」

「そういえば前に暴れてましたけど、破壊する興奮ってどんな感じなんですか。」

「なんでアンタにそんなコト教えなきゃならないんっすか……」

警戒されて全然話にならない。それでも彼のことを一方的に友達だとか変態仲間だとか思っているわけであるが、それを伝えた時、彼は仮面の向こうでどんな表情をしているのだろうか。
いつかは引っぺがして見てみたいと思う四巡なのであった。



【四巡+カルラ】

カルラは何だか酷い噂を聴いた。正直、此処数年の調教もとい教育は何だったのかとがっくりきた。
イリュー先輩と居るときはそっちにかかりきりになってしまったが、これは締めねばなるまい。
怒り心頭のまま家に帰宅して、ノアと猫先生にボコボコにされていた筈なのに何だかそこはかとなくのん気な雰囲気を纏っている長身の男を見つけると声を低くして自分の元へと呼びつける。

「ちょっと四巡、ここに正座なさい」

「ん?…ああ、はい」

怒気を孕んだカルラの声音に快く応じつつ、きっちり正座をしているが足がしびれないように足を組んでいるあたり四巡はちゃっかりしている。
カルラも四巡の前に腰を下ろして彼の目をしっかり見て話しだした。

「今日、イリューくんが落ち込んでました。」

「いりゅーくん」

「髪の毛が銀色で、目が緑色の、帰国子女の先輩よ。見覚えあるでしょう」

何かそういうの見た事あったような。
でもそんなに自分の中で重要な事項ではなくてほんの少し考える。

「銀色で緑……あァっ、やべっ」

思い当たった四巡は何故カルラがここまで切れているのかがようやくわかって思わず声をあげた。ついでにノアと猫と同じ要件だと察する。
”うわー。やっちまった、友達だったのか”と顔に書いてある四巡にカルラは眦をつりあげる。

「”やべっ”じゃないわよ!この大馬鹿!色情魔!変態!犯罪者!」

ピシャーンと怒髪天を突くカルラから雷が落ちる。四巡はその言葉にしょんぼりして見せた。
これは久しぶりにマズった、と思いつつちょっと言い訳をしてみる。

「えーと、未遂です」

「未遂だったら人を押し倒しても良いと思ってんのかこのボケっ」

カルラはどこまでもまともだった。

「…んで、そなこと聞いてないの。あのねぇ!人を!襲っては!いけません!」

「はい」

「これまで何回も何回も言い聞かせたよね?喧嘩しちゃダメってコトと同じくらい言ったよね。ついでにいうと今日の夜ご飯抜きだからね。」

「あー、はい、そうですね。仕方ないです。彼には、強烈にそそられたんです。興味に勝てなくってすいません。」

「そのやる気を、もっと別の方法で示しなさい。調べ物がしたいなら、しっかり正当な手順を踏みなさい。」

「でも…」

「でもじゃありません。まったく四巡は…」

彼女のお説教は長いなあと四巡は思っている。脚が痺れないように座ってよかった。
ぷりぷりと怒っている彼女に適当に相槌を打ちながら、だんだん空腹が堪えてきた彼は、まぁ次に彼にあったら、少しくらい謝ろうかと思った。

後日、近づいただけで先輩を半泣きにさせてしまった四巡は、襲うなら人目のつかないところで徹底的にやらないとやっぱり中途半端はダメだなと変な結論を出した。



【四巡×カルラ】

「四巡の手は気持ちいいね」

腕の中にいて胸に顔をうずめていたカルラがうっとり呟く。
今は背中に当てられている四巡の手の平。
いつでも温かいと彼女は甘えたように言った。

「ね、もっと触って」

言われるまでもないと返事の代わりに彼女の頭を撫でて、そのまま擽るように首筋に指を滑らせ、顎を持ち上げて指の腹で彼女の頬の柔らかさを楽しんだ。

彼女の表情に拒絶はない。
とても幸せだった。


「…という夢を見たんです」
「それを本人に真顔で語っちゃうあたり残念なイケメンなのよ」
「しませんか」
「しーまーせーん。そもそも私達、恋人ですら無いじゃない、妄想乙」 



【四巡+皇先生】

「皇先生、肩凝ってませんか。」
「いえ全く。」
「そんな、揉ませてください、五分だけでいいですから」
「嫌です。お断りします。」
「…生徒を攫って実験したこと、副学園長の前でついうっかり零してしまうかもしれなせんね、困ったなぁ。きっと減俸ですね、先生。」
「……。」
「あーあ皇先生も大変ですね、きっとこれから始末書に塗れることになって肩が懲りますよきっと。」
「…それは脅しですか?」
「いやですね先生、圧倒的に貴方のほうが強いのに、脅しなんかになりませんよ。どうです、肩もみさせていただけませんか?」 
「……ッチィ!!」



【四巡+夜臼ちゃん】

尻尾が目の前で、ふにふにと揺れている。
つい最近うっかり誘われてその尻尾を掬い上げたら怒られてしまったっけ。

膝の上の可愛い人。
愛でるために仕事を早く終わらせてよかった。
掃除と委員名簿と保健だよりを作って各クラスに配ってくるだけの簡単なお仕事。
彼女がいると作業効率が上がるのか下がるのか、よくわからないことになる。

「夜臼さん。」

「なーに、ますみちゃん」

ああ、癒しだ。
こう呼んでくれるのは彼女くらいなので、なかなかに嬉しい。

四巡はにこにことしながら、ポケットから飴玉を引っ張り出した。

「はい。今日のおやつは、いちごみるく飴です。一つだけ、ですよ。久楼先生から守り抜いた飴なんです。味わって下さいね」

「うん!」

元気に返事をして可愛らしい包を解き、小さな桃色のキャンディを口に含んで幸せそうな表情を浮かべる。
それだけで人をほわんとした気持ちにさせるのだから大したモノだ。

ああ。
ここを卒業して、それから、5年後、10年後、この子はどんな娘になるのだろう。
今でさえこれなのだから、男を手玉に取りまくりの転がしまくりになっていたりして。
そう想像するとすこし可笑しかった。

この幸せな少女は、今は年齢よりもかなり幼く見える。
しかし、幼いだけではない。
ふとした拍子に見せる、思春期女子特有の大人びた表情は普段のあどけなさとあいまって、ギャップ萌の域を遥かに凌駕する。
人を虜にするとはこの事だろう。

自分も魅了されたうちの一人だろうが、背後の彼女もそうなのだろうか。

背後から歯ぎしりの擬音なのか五寸釘を連打する音なのか、吹き出しになってゴリゴリと迫っている。
ぶつかったら凄く痛そうなので、四巡は仕方なく清水の舞台から飛び降りる心持ちで夜臼を膝の上からおろした。




【カルラ→鏡藍先生】


人の想い人の「何処がいいのか」なんて聞く人は、きっと本当に恋をしたことがないのか、単なる興味本位なんだろう。

そんな愚問には、答えてあげないぞ。
だって、良い所をいっぱい語って、あなたまでがその魅力に取り憑かれたら困る。
私だけが気がついていれば良いもの…と、少しだけ意地悪な気持ちになるのだ。

それでも、聞かれるのならたくさん迷って、こう答えようと思う。
何か漫画のセリフのようでちょっとだけ気恥ずかしい。


「彼の瞳が、綺麗だったから。」



きっかけくらいは語ろうか。
あれはまだ夏の少し前の、雨と蝉時雨の束の間の頃。
ある切っ掛けで保健室に足を運ぶようになってすぐで、お茶を出してもらった初めての日だ。
保健室で振る舞いっていうのに、驚いた。そして慣れた手つき。手際の良さをよく覚えている。
出てきたのは好みの濃さのアイスミルクティー。

グラスを手渡されたその後の、ほんの数秒を、彼と見つめ合った。

いや、最初はジッと見られているから睨まれてるのかと思って、負けじと睨み返したのだった。

今まで気が付かなかった。
彼の煌めいた瞳の色。とても、赤い。
何か耐え難いものを押し込めて渦を巻く、その赤色は夏の日差しを映して不思議な光を放った。

あ、きれい。


私が睨み返したからだろうか?
少しだけ驚いた表情になった彼が可笑しかった。

その時には彼の瞳はもう普通の色をしていて、今のはなんだろうと首を傾げたが、彼は気を取り直すようにお茶請けを探して席を立ってしまった。

あの色が気になって。
なにがあるのか、知りたくて。
もう一度、見たいと思った。

それから、いつしか彼の視線を追いかけるようになる。

彼のあの瞳は今、何をどんな色で映しているの?

観察してて分かったのは、厳しさは優しさの裏返しというが、この人は優しすぎる人なんだろう、ということ。
あんまりにも誰にでも優しいから、ちょと妬いた。

その紅茶は特別ではなくて。
指先も言葉も視線一つさえも彼にとっては他愛もないもので。

もっと私を見て欲しい。

そう思うようになって、けれど、視線を独り占めしたら、とたんにどうしたら良いのか分からなくなる。ああ、耐えられない。
私は何がしたいんだろう?どうして彼ばかり見ているのだろう?

近くに行きたいのに行けば逃げたくなって、
逃げたらすぐに後悔した。

もう少しだけ近く、あと少しだけ近く。
心地よい距離を探している。
そんな風にして、自身の執着に首を傾げて、一年の冬は過ぎていった。

春になって、二年生。
クラスメイトにとても個性的な人が多くて、全然退屈しなかった。


……そうだ、今度、私が見ているものを彼に話してみようかな。
そうしたら、彼の見ている景色も、聞かせてもらえるかもしれない。

幸運なことに、保健室との接点が増えたのでその願いは容易に叶った。

ポッケに潜ませた甘いお菓子は少しでも、彼との時間を長引かせるために。

お話したいな。
沈黙でもいいけれど。

今日は、どんなことがありましたか。

その言葉を、お菓子と一緒に添えて差し出そう。

かけがえのない時間を少しづつ重ねていた。
いつしか、その時間がとてもとても好きになって。待ち遠しくて。

もう一度あの目を見つめた時に、私はこの人が好きなのだと気がついた。


知ったこと、気がついたこと。
噂のざわめきからも。

あの人は、人の目が好きなのだと。

ジッと見られていた理由が分かったのは良いけれど、実はとても困っている。

目、って。
私は今どうしたら彼の気を引けるのだろうと考えていたりする。

…私の目は綺麗ですか?

目の好みは、よくわからないから聞いてみようか、聞ける時に。

ね、先生。
もっと知りたいです。教えて下さい。

どうしたら、この気持ちを貴方に届くように伝えられるのか。
いつまでも、見つめているだけでは駄目だろうから。


ああ、喋り過ぎたかな。
もう、どうでもいいでしょう、こんな話。
きっかけは少しの一目惚れということ。
でも、それだけじゃなくってね。

うまく言えないのだけれど。

知りたくなって気になって、知って気がついて、そうしているあいだにいつの間にか好きになっている。
ね、きっとそういうものなんだよ。

だからその目で確かめて。
あ、でも、惚れちゃダメだからね!?






【カルラ+四巡(派生)】


喧嘩をしてボコボコに相手を伸して、自分もボロボロになって帰ったら、何故か関係ないカルラがボロボロと泣いた。
彼女がどうして泣くのか、最初はサッパリ分からなかった。

「喧嘩したら四巡も痛いでしょ。相手の人も痛いのよ。」

それはそうだ、斃すために痛めつけているのだから。
掛かって来る相手に全力を尽くさないと、勝てるものも絶対に勝てない。

「ねぇ、四巡。もしものことがあったらどうするの。いつもこれくらいで済むとは限らないじゃない」

つまり、もしものコトなどないくらい、強くなれば彼女は泣かないのか。
彼女が泣かないように、俺は安全な喧嘩をしようと決めた。

一撃で伸す方法、安全に相手を落とす方法、あまり殴られないで済むような体の動かし方とか、ヤバくなったら逃げるタイミングとか。そういったのを身につけようと決めた。
そのために、まずは実際試すのが良いと手当たり次第に喧嘩を吹っかけていたら、いつの間にか不良と呼ばれるようになっていた。
何故か隣町の悪い奴が徒党を組んで襲ってくるような体になっている。
返り討ちにしたり、されたりした。

なかなか楽しくて無茶苦茶な毎日で、望むところで、とても強くなった。
けれども、無敗というわけではない。

一度目は、眼鏡の似合わない女の子のような男子に、口と戦術で負けた。
二度目は、金髪でいかにも悪そうな男子に、スピードと技術で負けた。

そうやって、たまにズタボロになって家に帰ると、カルラが半分泣きそうになりながら鼻を啜って、懸命に手当してくれる。
そんな彼女が可愛いので、こうして、うっかりわざと、やられたりする。
彼らには、また喧嘩してもらおう。

四巡はこの時間を気に入っていた。
彼女が自分のためだけに一生懸命になってくれる時間が。

彼女から自分に触れてくる時間を得るためなら、少しの痛みを引換にするくらいなんてこと無いと、
そう微かに微笑めば、弧を描く自分の口元に彼女が気がついて、じろりと睨んできた。
消毒液をどばどば傷口にかけられた。ひりひりと染みる。

「…っくぅう、ら、乱暴にしないで下さい…。」

「文句言うな。タコすけ、馬鹿、アホ…!もう知らないんだから!これっきりだよ!」

けれど、そう言いつつ、毎回必ず手当に来てくれる。
時々自分がどこかおかしいのではと思うのだが、こうやってでしか、彼女と上手く接せずにいる。
それは家族としての義務なのか、ただの好意なのか、彼女の正義感なのか、四巡には区別がつかない。
こうして貰うことだけが全てだった。

……馬鹿なことだとはわかっている、愛想を尽かされたらどうしよう。

そう言いつつも、どうしてもやめられない。
……いつか、喧嘩三昧を卒業できるころには彼女との関係も変わっているのだろうか。
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