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格好悪い。
格好悪い。
くそ格好悪い。

「何で俺に目を奪われるのか」、理由を探しておけよと言っておきながら音駒との試合にストレート負けした。これじゃあいくら頑張っても目を奪われる理由など見つかるはずも無く、逆に幻滅させるだけだ。


「くそー凄かったなあ!」


帰り道、日向は大声で悔しがっていた。同じ相手と何度か試合をして全て負けたのだから当たり前だ。

白石は試合を見て、俺の姿を見てどう思ったのか分からなかった。いたって普通、に見える。もしかして日向は適当な事を言っただけで、別に白石は俺の事なんか何とも思っていなかったり…は、さすがに無いか?

面と向かって「感動した」「目を奪われた」なんて言うくらいだから少なからず特別なはず…だと思いたい。俺ももはや、白石の事をこんなにも意識しているのだから。

この気持ちは恐らくあれだ。あれ。
まだ決定では無いけど、多分あれ。

自分でも困惑している。
自己暗示にかかりそうだ。

家に着いて、夕食の前にスマホの充電をしようと充電器をさす。そして、ふとLINEを開く。グループLINEに主将から「明日は部活は休みだからゆっくり休むように」と入っていた。それ以外は誰からも来ていない。…誰からも。
と、思っていたら突然きた。


『お疲れさまです』


白石からだ!やばい既読を付けてしまった。こんな機能くだらねえ、俺は既読や未読には振り回されないぞと思っていたのに慌てていったん画面を消す。既読は消えないのに。
そして深呼吸してからもう一度開くと、続けてメッセージがきていた。


『理由、見つかりませんでした』


なんというネガティヴなメッセージ!これは真面目に返すべきかどうか。


『負けたから仕方ないです』


とりあえず、上記のように返した。
負けっぱなしの姿を見せられたのでは、目を奪われるもクソも無いだろう。

しかし、そこから返信が来ない。5分待っても、10分待っても。もしかしてかなり意地っぽい返信に思われたのだろうかどうしよう。
どうしようという気持ちと、今日の試合のこと、目を奪われたという試合のことを聞きたいという気持ちがごちゃごちゃに絡み合う。

俺は次のメッセージを打った。
と同時に白石からも来た。


『明日、放課後暇ですか?』
『明日の放課後あいてますか?』


どっちをどっちが送ったのかなんて、もはやどうでもいい事だ。





主将から連絡のあった通りゴールデンウィークあけの今日は部活は無く、休養日。

自主練しようかとも考えたが体育館はコンクールを控えた吹奏楽部が使うらしいので、どちらにしても今日は無理だった。

それに放課後は予定があるのだ。
女子との約束。

いったい俺たちは二人でどこに出かけるのだろう制服で、と緊張していたが昼休みに白石から来ていたLINEは次のとおり。


『ホームルーム終わったら食堂でどうでしょう』


…食堂でゆったり話していたら他の生徒やバレー部の連中に見られるんじゃ?却下。


『学校外にしませんか』
『じゃあちょっと歩くけど、駅前のモールあたりで』
『了解です。』


そして、スマホをポケットにしまう。
白石と放課後の約束をしてしまった。
誰にも知られていないだろうな!?と、無意味に周りをキョロキョロすると日向が居た。


「なにキョロキョロしてんだ?」
「べばっべぶ別に」
「怪しいなぁぁ〜」
「怪しいぞぉ」
「焦ってるな」
「げっ!田中さん西谷さんまで何を」


一年の階になぜか先輩がたがいらっしゃる。しかも、どうやら揃って俺を探していたようだった。


「今日部活ないし、放課後たまにはパーっとボーリングでも!と思ってよ」


田中さんがボーリングの球を放る動きをし、少し離れた西谷さんが「がらがらがらん!ストライーク」と言いながらくるくる回った(たぶん、ボーリングのピンの役)


「…すんません。俺、パスで」
「え!?もしかしてボーリング下手とか?」
「は?下手じゃねぇしプロ級だしアベレージ300だし」
「嘘はいかんぞ影山」
「今日は用事あるんで…」


あくまでいつも通りのテンションを保ちながら断ると、3人ともなんとか納得してくれた。
これが月島だったならばもっと突っ込まれていただろう。月島からボーリングに誘われるなんて、例え生まれ変わっても起こり得ないだろうが。

ボーリングが嫌いなわけでも、断じて!下手なわけでもない。しかし今日だけは、大事な用ができたのだ。

14.誘いをうまく断る方法