※微妙に性的描写がございます※



あ、やばい、落ちる。と感じた瞬間からの記憶は無く、目が覚めると照り付ける太陽の下で大の字になっていた。ここは屋上、さきほどまで日陰だったこの場所は太陽の場所が変わったせいで直射日光を浴びている。

やってしまった、と思いながら腕時計に目を落とせば午後の授業が既に開始されている時刻。
今から教室に入っても仕方が無いし、顔がひりひりするという事は日焼けして赤くなっているだろうし。などと言い訳を考えながらとりあえず屋上のかろうじて日陰になっている部分に移動した。


「…なんでお前まで居るんだよ」
「あ、おはよう」


屋上のドアの反対側、日陰の部分にはすみれの姿があった。昼休みを一緒に屋上で過ごした記憶はあるが、あれからずっとここに居たのだろうか。


「いや起こせよ。顔いってえ」
「焼けてるね」
「ヒリヒリする」
「あはは」


けらけら笑っているという事は、俺があそこで大の字になっているのを見殺しにして自分だけ日陰に移動してきたらしい。彼女いわく「起こしたけど起きなかった」との主張なので信じるしかないが。一応俺を日陰まで引っ張ろうとしたけれども無理だったようだ。


「つうかもう5限始まってんじゃん」
「そうなのー」
「そうなのー、って…すみれ出なくていいのかよ」


すみれは比較的真面目なほうだ。授業をサボった事は無いと思う。
そもそもうちの学校は勉強が出来るやつら・勉強する事に嫌悪感を抱かないやつらが集まっているので授業をサボるなどという発想すら浮かばないだろう、スポーツ推薦組以外は。まあ俺も今回に限ってはサボりたくてサボったわけじゃないけど。


「1回くらい良いかなって。せっかく隼人と一緒なら」


しかしすみれが顔まわりの柔らかそうな髪を耳にかけながら言うのを見て、サボって正解だったなと思えた。


「…ふうん」
「嬉しそうにしてくださーい」
「嬉しいけど」
「ほんとぉ?」


本当だよ、けどそんなのいちいち口にするなんて男らしくないだろ、と目で訴えるとすみれに伝わったようで、笑みを堪えるように唇を閉じると俺の肩にもたれかかってきた。

ことんと置かれるすみれの頭は少しだけ重い。そして彼女の髪からは「最近変えたんだ」と言っていた新しいシャンプーの香りがした。すみれからは俺の顔が見えないのを良い事に、少しだけ鼻を彼女の頭に寄せて嗅いでみる。いいにおいだ。

俺がすみれの香りを楽しんでいると、同じようにくんくんと鼻を鳴らす音が聞こえてきた。


「…あー、隼人のにおい」
「どんなだよ」
「汗くさい」
「おい」
「うーそっ」


肩の上に頭を乗せたまま笑うので、俺の身体も上下に揺れる。馬鹿らしいけど幸せだなあなんて流れる雲を見ながら考えた。俺が俺じゃないみたいなロマンチックな思考だ。そうさせているのは、日々勉強に部活に明け暮れる俺が何の気も遣わずに過ごす事のできる無邪気で能天気な彼女である。

その彼女のはひととおり笑い終えると顔を上げた。ばっちり目が合って、油断していたのでどくりと心臓が跳ねた。


「ちゅうして?」


その上こんなお願いをしてくるもんだから心臓は活性化して仕方ない。
亀のように首を伸ばしてくるすみれの頬を撫でると(このようにされるのが好きらしい)、今度は犬のように目を細めて頬をすり寄せてきた。

そのすみれのピンク色の唇へ口づけて、ちゅっという音とともに唇を離しまたすぐに優しく噛みつく。歯を立てると危うく噛み千切ってしまいそうなほどに柔らかい。俺が必死に力を加減しているのを知ってか知らずか、多分知らないんだろうけど、すみれは何度も角度を変えて俺の唇を求めてきた。
そしてやっと満足したらしく顔を離した時には、額からひとすじの汗が流れていた。


「……あついね…」
「おお」


ただでさえ気温が高い真昼間に、好きな相手と密着していれば暑くなるのも無理はない。けれど、「暑い」という理由でこの幸せなじゃれ合いを止められるほど冷静では無い。

再びどちらからともなく顔を近づけて、つんと鼻先を当ててから「ふふ」と笑う彼女の顔を堪能した後はもう一度唇をいただいた。こんな幸せな昼休みは初めてだ。またサボってやろうかと思うほど。

そして時間を忘れるくらいキスに没頭していると、すみれの息が上がっている事に気付いた。


「暑そうだな」
「隼人もね」
「そりゃあ…」


ふたりきりで、こんな事してたら誰だって興奮するに決まっている。おまけにすみれは気温とこのシチュエーションのせいで頬が紅潮しているし、息遣いもほんの少し荒い。とくれば男の俺がこのまま我慢できるわけもなく、第二ボタンまで外されたすみれの首元へがぶりと噛みついた。


「ひゃ」
「しー」
「や、…ちょ、こんなとこ、で」


こんなとこだから興奮するんだけど。
身をよじるすみれの第三ボタン、第四、五まで外していくと白いフリルがあしらわれた下着が現れた。今日に限ってコレかよ、昼休みを俺と過ごすのを予測していたのか。


「…だめ…だめ、ここ、外」
「知ってる」


俺の肩を、頭をつかんで引きはがす素振りを見せるもののあまり力がこもっていない。本気で嫌がるすみれはもっと怪力だから(初めての時に全力で抵抗された)、まだ大丈夫なのだろうと認識し鎖骨のあたりに舌を這わせる。

女性らしく華奢な骨がうっすらと浮いている、それに沿ってぺろりと舐めるとすみれの手に力が入った。が、それは俺を押し返す力ではなく快感に耐える力。俺の制服をつかむ手がぎゅうと強くなったのを感じてますますスイッチが入ってしまう。もっともっとここを責めたらどうなるのかと。

胸元のあたり、柔らかいそこを何度か嘗め回したあと少し強めに吸い上げると、今度はすみれの押し返すほうの力が入った。


「……ッふぁ、あ」
「うお、やべ」


吸い上げていたそこには赤紫色のあざが出来ていた、見る人が見ればキスマークである事は一目瞭然である。


「え?やばい?え!?」
「見えるかも」
「なにが?」
「キスマーク。ここ」


俺が指さしたところを見下ろすと、ぎりぎり視界に入る場所だったらしい。すみれはその赤い部分を見つけた瞬間に目を丸くした。


「わぁ!さいあく」
「ほーん、サイアク?」
「……でもないけど」
「よろしい」
「けどコレ、ギリギリだよ…見えたらからかわれるじゃん!隼人のせいだからね」


などと頬を膨らませる姿さえ性欲に火が点くって気付いているのか。きっと気付いていない。


「じゃあ仕返しするか?」
「え…」


きょとんと呆けたすみれの顔が面白かったけど吹き出さないようこらえつつ、俺もボタンを外していく。身体に風があたって気持ちがいい。
面倒くさいので全てのボタンを外してから「ん」と両手を広げてみると、すみれは戸惑いながらも俺の身体を凝視した。


「……いいの?」
「おう」


ぺた、とすみれの手が俺の胸元につく。すみれは俺の首元あるいは胸元のどこにキスマークを付けるか悩んでいるようだったが、俺は目の前で俺の身体に視線を落とす彼女に釘付け。頼むから早くしてくれないと押し倒してしまいそうだ。

あと数秒で屋上の床に押し付けてしまいそうになった時、すみれがかぷりと右胸あたりに食いついた。そして、たぶん彼女なりにちゅううと吸い上げた。弱い。


「……つかない…」
「もうちょい強く吸ってみ」
「ん、」


頷きながらもう一度同じ場所に唇を押し当てて、さっきよりも強く自分の身体が吸われているのを感じる。これは結構な快感だ。すみれが必死に俺の身体を吸っているのも、その髪からシャンプーの良い香りがするのも、すみれの髪が俺の顎をくすぐるのも。


「…ついた」


やがて顔を離したすみれの顔には少しの達成感があった。確かに彼女が口づけていた部分には赤い痕ができており、部室で着替える時に気を付けないとなと頭を過ぎる。
しかしすみれは部活に所属していない。つまり着替える時の心配は要らない、体育の時以外は。


「もう一発つけていい?」


俺が聞いてみると、すみれは静かに頷いた。こんな時じゃないとしおらしい態度にならないのも良いなあなんて満足感に浸りながら、先ほどよりももう少しだけ胸に近い部分を舐めてみる。

ぴくりとすみれの身体が動いた。抵抗はされていない。まずは痕が付かない程度に優しく口づけながら反対側の胸を揉んでみると、ついに気持ちよくなったようで吐息と一緒に声が漏れ始めた。


「ッ…ぁ、…」


その声に自分でも驚いたようで思わず口をふさぐ姿は俺のお気に入りである。あんまりいじめると時々拳が飛んでくるので一旦顔を離してみると、顔を真っ赤にしたすみれが居た。


「きもちよかった?」
「は、隼人が…別のとこも触ってるからじゃんかっ」
「へえ、そうですか」


既にふたつのキスマークがついた彼女の身体はすっかり熱くなって、胸元にはつうと汗が流れていた。この汗、舐めたらどんな味がするんだろうか。そう思って指ですくってくわえてみると、ほんの少しだけしょっぱい。


「汗かいてんな…」
「や、きたな、い」
「平気だよ」


平気というか、むしろ大歓迎と言いますか。俺の肩を押し返そうとするすみれの手は軽く振り払って、もう一度胸元へ顔を埋めた。

あと数個残っていたボタンも全て外し、背中に手を回すと比較的外しやすい下着のホックがあったので、まあ外しますわな。俺がこの下着を好んでいる理由にはデザイン以外にも「ホックがひとつしか付いていない」事が挙げられるのだ。


「っ…や、ぁ……っ」


ついに胸全体を露わにしてしまったすみれの、汗がにじんだしっとりとした肌を舐めるのはとてもぞくぞくする、俺の眠っていた支配欲を掻き立てる。

弾力のある胸は過去にも、そしてこれから先も俺以外の人間が触れる事の無い場所だ。ふくらんだ小さな乳首や本人が気にしている腹まわり、膝をすり合わせて熱に耐えている脚の付け根も。
ごくりと唾を呑みながら、規定の長さをこっそり超えたスカートをめくりあげようとするとすみれの手がそれを制した。


「……も、だめ、終わり」
「あ?」
「我慢できなくなっちゃう…」


そんなのってアリか。と言おうとしたが今が5限目をサボっている真っ最中で、ここは学校の屋上であるのを思い出した。
こんなところで最後までするのは確かに良くないよな、興奮するけど。女子は色々整った場所でやりたいだろうし、俺いまティッシュ持ってねえ。


「……ちっ、はいはい」
「舌打ちが聞こえた」
「おあずけ食らったら仕方ねえだろ」


やれやれと身体を離し、必死に冷静さを取り戻しながらボタンをはめていく俺。すみれにつけられたキスマークが隠れていくのがちょっと惜しいなと思いつつ第二ボタンまで留め終えると、すみれが俺の腕時計を見ていた。


「授業終わるまで…あと何分?」


その言葉に俺もはっとして時計を見た。時間を忘れて6限目に突入していたら洒落にならない。が、幸いもう少し余裕があった。


「あと15分くらい」
「そっか…」


すみれは何かを言いたげで、決して目を合わせようとしないのには理由がありそうだ。いまだに彼女のボタンがすべて外れたままである事も。


「…もう1回、私もやっていい?」
「何を」
「仕返し」


仕返し、つまり俺の身体にキスマークをつける事。たった今自分から中断しておいてそれは無いだろ。


「駄目。」
「えっ!?なんで」
「我慢できなくなんだろ」


俺が断るとは思っていなかったらしく、すみれは眉をハの字にして悲しげな顔をした。そんな顔したって俺は揺るがないぞ、多分。どうしてもって言うなら揺らぐけど。軽々と。
すみれはブラウスのボタンを留めるか留めるまいかと指で触っていたが、ついに観念した。


「そ、それでもいいよ。我慢しなくて」
「マジか」
「正直もう、そういう気分だし…」


とんでもないじゃじゃ馬を彼女にしたものだ。すみれはブラウスを脱ぎ捨ててしまい、白い肌に赤い印がふたつ付いただけの上半身を惜しげもなく晒した。

ほんとうに良いのか俺、授業中に学校の屋上でこんな事をしても?しかしそんな心配をするにはもう遅く、すみれはすでに俺のシャツに手を伸ばしていた。


「…15分で終わらせて。」


せっかく留め直したボタンを今度は彼女の手で外されていくんだから、これを拒否したら男じゃないよな。恥ずかしながら15分というリミットは今の俺にとって充分な時間だったのでお言葉に甘えておく。

みっつめのキスマークを付けるとすみれは「仕返し」と言いながら俺の胸元にキスをしてきた、やっぱり10分で充分かもしれない。

ぼくらは遊ぶ青嵐のしたで