雷嫌い



いつもであればこの時間はまだ明るい、綺麗な夕焼けが見えるはずだが今日は生憎の雨。
それに加え空を包み込むような雲でさえ手に負えないほどの光が何度も辺りを照らしていた。
何かが迫り来る音と共に。

「ひっ……!」

音が鳴ると同時に肩が跳ね、その体は赤い髪を持つ彼の方へ預けるようにして倒れた。
それを難なく受け止めた彼、赤司は実に頼もしい。

「むりむりむりむりしにそう」

「あれ、白城っちどうしたんスか?」

もしかして雷怖い?そう笑いながら言った黄瀬にいつもなら鋭い眼差しとともに浴びせられる罵声はこなかった。
それの代わりといってはあれだが、涙目で黄瀬を睨みつけていた。

「お前が雷が苦手なのは知らなかったのだよ」

それまで赤司と話していた緑間は眼鏡の位置を弄りながら興味深そうに言った。

「じゃあこれ食べるー?」

のびのびとした声が聞こえたかと思えば目の前に棒がついた飴が差し出される。

「……あ、りがと。でも俺甘いの嫌い」

あらら、残念。と断られたにも関わらずさほど気にしていない紫原は差し出したそのお菓子の袋を開け、自身の口の中へと放り込んだ。
その後ろから新たな影が見えた。

「雷嫌いは一生治らないって聞いたことあるんですけどどうなんでしょうね」

鳴り止むことを知らない雷の鋭い音が響く中、その音に恐怖することなくぴくりとも変化がない表情をした黒子が言った。
その言葉に若干怖気づきながらも未だに赤司の練習着を掴んだままの手に気が付いた彼は咄嗟に手を離した。

「もういいのか?」

微笑みながらも名残惜しそうに聞いてきた赤司に今までの行動が脳内で再生され、その恥ずかしさに頬が熱くなるのを感じながら顔を背けた。

「そんなに雷怖いなら1on1やろぜ」

なら、の使い方がどこか可笑しい気もするが投げられたボールを取りながらもそれに肯定する。

「手加減なしだからな!このストレス全部ぶつけてやる」

さっきまで怯えていた人が言った言葉とは思えないその行動に周りは苦笑いを浮かべていた。
バスケであれば売られた喧嘩は必ず買うであろう彼、青峰は当たり前のように返す。

「やれるもんならな」

「俺も!俺も1on1したいっス!」

皆が皆、バスケに対し熱くなるにつれ逆らうかのように辺りが暗くなり始めた頃、外の様子などすっかり忘れ去られるほど打ち込み続けている彼等を見守るように、空には虹が架かっていた。




***

今さっきの雷がすごかったので何か書けないかなぁと。


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