05


「5対5のミニゲームやろう!一年対二年で」

それは唐突だった。
今日の天気は生憎の雨。
雨ということはロードワークが出来ない。
いつもやっている練習が出来ないととするとその時間に穴が開く。
その時間を埋めるために提案されたものだった。

「覚えてるか?入部説明の時言ってた去年の成績。去年一年だけで決勝リーグまで行ってるって……!」

「マジで……!?」

去年のことはあまり詳しくはないけれど決勝まで登りつめたのは知っている。
けれどやる前からそんな弱気では勝てるものも勝てない。

「ビビるとこじゃねー。相手は弱いより強い方がいいに決まってんだろ!」

そんな中、火神が声を上げた。
なかなかいい意気込みじゃないか。
ところでテツヤは、と思って辺りを見渡した。
いた。ゼッケンを着て、リストバンドをはめていた。
彼はあのパスを見せるのだろうか。
パス以外が普通以下だからまた変な事言われそうだけど。
じっと見すぎていたのか彼はこちらに足を運んできた。

「心配しなくても観察し終わったらパス出します」

失敗しませんから。そう言った。

「そ。んじゃ頑張れ」

不安なんてない。そんな思いを込めて拳を突き出すと彼は分かりづらいけれど確かに微笑んで拳を合わせた。



1年2年両チームコートに入り、ポジションについた。
それから笛の合図と共にゲームがスタートした。
ジャンプボールを取ったのは1年、火神だった。
そこから速攻。気が付くとダンクが決まっているというセンスまかせのプレイで、おまけに破壊力も申し分ない。

「とんでもねーなオイ……」

即戦力以上の登場で先輩達は驚きを隠せない様子。
得点は11:8
思った以上に火神には力があったようだ。

「一年がおしてる!?つーか火神だけでやってるよ!」

そんな言葉が出てしまうのも仕方ないだろう。
初心者でもわかるぐらい圧倒的だった。
それとは別にもう一人、逆にボールを取られている者が。

「スティール!?またアイツだ!」

テツヤだ。
しかし観察するにしてもボール持つのはまずくないのか。
火神の様子からして相当頭にきているようだ。
ジャンプして先輩のレイアップを防いでいるが粗さが目立つ。

「そろそろ大人しくしてもらおうか!」

火神の独壇場かと思われたがそれとは一転。
彼に三人マークが付き、ボールを持っていなくても二人、ボールに触れもさせない試合運びだった。
そして点差はどんどん開き、15:31
まだ諦めなければ勝てる点差にしろ、精神的にはきつい。そんな状況だった。

「やっぱり強い……」

「てゆーか勝てるわけなかったし……」

「もういいよ……」

チームの一人だけならまだしもその半分以上が弱音を吐いてしまえばそれは指揮にも関わることで。
案の定火神が声を張り上げていた。

「もういいって、なんだそれオイ!」

胸倉を掴み、今にも殴りかかりそうな勢いだった彼の膝はカクンと音がしそうなほど綺麗に折れた。

「落ち着いてください」

その勇気ある行動というか無謀さというかそういう所は昔から変わらない。
当たり前のように揉めてるけど誰か止めなくていいのか。
それから監督による仲裁でなんとか試合が再開しようとしていた。

「すいません、適当にパスもらえませんか」

味方に指示を出しているその声を聞いて不覚にも口角をあげた。
彼のパス捌きをこの目でじっくり見ることが出来るのは嬉しい。
っていってもしっかり追っていないとすぐ見失うことになるけれど。

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