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いつも通りの練習が一通り終わり、休憩になった時にキャプテンである日向先輩が言った。
「おい、監督どうした?練習試合申し込みに行くとか言ってたけど」
「さっき戻ったスよ。なんかスキップしてたし、オッケーみたいスね」
「スキップして!?」
1年生はきょとんとした顔をしているが2年生は絶望のあまり砕けそうな顔をした。
それにしては表現が大袈裟なような気がするけれど。
「おい、全員覚悟しとけ。アイツがスキップしてるってことは……次の試合相手相当ヤベーぞ」
噂をすればなんとやら。
体育館の入り口から見えた監督は軽やかにスキップしていた。
それはそれは嬉しそうに。
「あ、監督、おかえりなさい」
「ただいまー!ゴメンすぐ着替えてくるね。あとね、キセキの世代いるとこと試合組んじゃった」
一瞬沈黙が訪れたかと思いきや男子特有の低音が響く。
体育館って響きいいよね。
一人で歌うと気持ちよさそう。
***
部室で荷物整理をしているとふと声が聞こえる。
「あれ?これって……」
そう言った先輩の手にはバスケの雑誌が。
それに気づいた皆が輪になって順々に覗く。
「この号黒子と橙山が帝光いた頃のじゃん?」
「おー。一人一人特集組まれてるよ、キセキの世代」
「黒子は……記事ねーな」
「6人目なのに取材来なかったの?」
「来たけど忘れられました」
何を言うのか分かっているのだがやはり聞いてしまうのだろう。
それぞれがテツヤに哀しい目を向ける中、小金井先輩が声を上げた。
「お!橙山載ってんじゃん!なになに……」
"強豪校帝光中のレギュラー。スタメンではないものの味方選手の動きを把握し、周りを見ずに正確なパスを出すことが出来る。また、その中でもキセキの世代の一人、赤司征十郎とのコンビネーションは抜群である。"
読み上げたその文章に偽りはないがなかなかに恥ずかしい。
必然的に視線を集めた俺は目を逸らす。
「前から思ってたんだけど、赤司とどういう関係なんだ?」
やっぱり不思議に思うよな。と思って少しの間のあとその疑問に答える。
「……幼馴染みですよ。小さい頃から」
「え!じゃあ小学校とか同じだったの?」
「いえ。同じだったのは中学だけです。まあバスケを教えてくれたのはあいつですけど」
へー。と納得の声が少なからず上がった。
何気に興味津々だったのは皆同じなようでちょこちょこと質問に答えていった。
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