神童兄 | ナノ
そっくりな話
「あれ、神童くんじゃないか」
嫌な奴に出会った。
それは吉良財閥を継いだ若社長で、俺より少し若い人だ。なにかの企画をする時には大体吉良財閥が関わっており、大変お世話になっているのだが俺の少し苦手な相手だ。
どこか馴れ馴れしいし、怖いほどに優しい。何か企んでいるんじゃないかって思うほど。
「日本に来てたんだね。言ってくれればよかったのに」
似合わない買い物袋を手から下げて、いつものスーツ姿ではなくラフな格好をしている。
「折角の休みなんでね、仕事相手には会いたくないんですよ」
嫌味ったらしく言ってやれば、吉良は笑った。
「まぁ、神童くんは僕のこと苦手だもんね。見てればわかるよ。そうだ、今から雷門中に行くんだけど神童くんも行くかい?」
吉良の言葉に誘われて、雷門中に来た。
駐車場で吉良の車に乗れば、運転席には秘書の緑川がいてお化けを見たかのように驚かれた。
雷門中の門の前で降りれば、車は少し先のところで道路の端に寄って止まる。
「そう言えば、神童くんの弟くんも雷門中にいるんだよね」
軽く無視をし吉良についていけば、いつの間にグラウンドに踏み込んでいた。
そこには黄色いユニフォームを来た少年たちがサッカーをしていて、その中には腕に赤いマークをつけている拓人の姿も見られた。
「うちの子はね、あの青っぽい色の髪の毛の子だよ」
吉良にそう言われ、俺はうんともすんとも言わなかったが、無意識に青色のの髪の毛の子を探した。
目つきの悪い子で何か企んでそうな子。でも、楽しそうにサッカーをしている。
「子供いたんですね」
「いや、施設の子だよ。僕はもともと施設育ちだからね」
その言葉を聞いたものの特に詳しく聞こうとはしなかった。
「流石兄弟ってところかな。人望が厚いところとか、まっすぐな目をしてるところとか、本当君にそっくりだね」
「それは間違いですね。俺にそっくりなんじゃなくて、俺がそっくりなんですよ」
俺が拓人に。