神童兄 | ナノ
似てる話
「神童、あれ、お兄さんじゃないか?」
部活からの帰り道、霧野の視線の先に兄さんの背中が見えた。
どうやら向かう方向は一緒のようで、顔を合わすことはない。
「本当だ」
「雰囲気似てるからそうだと思ったよ」
霧野から少し笑われながら言われたが、その言葉を聞いて少し嬉しくなった。
俺は小さい頃、「光貴くんとは真逆だね」と言われたことがあった。それがどうしても「お前のほうが劣っている」と言われてるような感じがして嫌だった。
兄さんに似ているということは、泣き虫なのは変わらないが昔よりは強くなったのかな、と思う。
「なんか神童嬉しそうだな」
霧野に言われ、少し俺は慌てた。
霧野はそんな俺をみて笑い、俺も釣られて笑った。