神童兄 | ナノ
中庭の話

中庭で本を読んでいた。
木の陰に白いガーデンテーブルとチェアがあり、太陽の光が当たらない形になっている。
少し風が吹いていて、ちょうどいい温度なので気分良く本が読める。
ガーデンテーブルの上には氷の入ったフルーツジュースがあるのだが、暑さで氷は溶けてしまっている様子。
そのジュースを一口飲むと、まだ冷たかった。

少し読み疲れて本に栞を挟み、本をガーデンテーブルの上に置いて首と肩を回した。
音が鳴るものだから、年をとったな、と感じる。
あたりを見回せば、敷き詰めた芝生に大きな花壇。花壇には夏らしく向日葵が咲いていて、向日葵は太陽のほうを向いている。
向日葵は光がある方に向くため、花言葉は「あなただけを見つめる」と言うらしい。まぁこんなのはただの蛇足だ。
蝉の声を聞きながらぼーっとしていれば、「兄さん」と声が聞こえた。
後ろから目の前に現れたのは拓人だった。半袖に生地の柔らかそうな長ズボンを履いていて、足にはサンダルを履いている。


「暑くないんですか?」


拓人が俺の顔を見て聞いてきた。
俺は少し眠たかった目を開き、拓人に視線を向けた。


「暑くないよ。涼しい」


風が吹き、拓人の髪の毛がなびく。俺にはなびくほど髪の毛が長くないので、前髪が上がる程度。
拓人は「そうですか」と言えば、目の前のガーデンチェアに座った。
俺は足を組み、膝に頬杖をついて本の表紙に視線を落とす。拓人が目の前に座ったのはいいが、心地よい風で眠気が誘われてなにを話そうか思考が回らない。


「眠そうですね」

「眠い」


拓人に言われ返答すれば、あくびが出た。


「拓人はなんでそこに座ったわけ?」


俺は聞いてみた。
特に用もないはずなのに、なんで俺の目の前に座ったのか。
ここより家の中の方が涼しいはずなのに。


「特に用はありません。少し暇だったので」

「俺と話したかったとか?」


冗談のつもりで言ってみたら、拓人は黙ってしまった。
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