神童兄 | ナノ
兄さんしかわからない話

通信簿が配り終わると、今日の学校での用事は終わり、すぐ帰ることになった。
ほんの一時間程度しか経ってないが、まぁそんなものだろう。


「神童」


廊下で背後から声をかけられた。振り向けば相手は霧野で、スクールバックを肩から下げて通知表を手に持っていた。


「途中まで一緒に帰らないか?」

「ああ。そう言えば通信簿はどうだったんだ?」

「……聞かないでくれ」


一気に表情が暗くなった霧野に対して、俺は笑みを零した。
すると霧野は通知表の話をしたくないようなので、話題を変えてきた。


「夏休みはどうだ?」

「部活の日々だな」

「まぁ、そうだが……」

「……兄さんが帰国してきたんだ」

「へぇ、神童に兄弟がいたのか。知らなかったな……」


霧野は驚いた様子で言った。
霧野とは小学校からの親友だが、兄さんは一般の小学校には行かず受験をし、しかも滅多に家にいなかったため知らないのも無理はない。


「お兄さんは海外で何をしてるんだ?」

「海外籍での会社の社長をしているよ」


霧野は「流石だなぁ」と呟いた。
下駄箱で上履きを袋の中にいれ、靴を履く。俺のほうが先に靴を履いて先を歩くと、遅れてやってきた霧野が小走りで横に並んできた。


「仲がいいのか?」

「……どうだろうか」


霧野の言葉に少し疑問を抱いてしまった。
正直、俺は兄さんとの間に壁を感じている。たった数年間合ってないだけで壁が出来たわけではないが、兄さんが海外籍の社長の座に座ってからは俺と兄さんは違うのだなと思い始めてきた。
兄さんは行動力があり、有言実行する人で、泣き虫な俺とは正反対。血が繋がっているのに、何故こんなに差があるのかと劣等感を感じてしまうほど。俺が神童財閥の後継になるのも、兄さんの方が断然向いていると思う。
別に兄さんのことが嫌いなわけじゃない。昔からスポーツ万能で何ヶ国語も喋れて俺の憧れの存在だったし、むしろ好きだ。俺はピアノで賞をとるぐらいで他は何もできなく、家のことに何も貢献できない。
そんな俺とは違い、社長になったりと家に貢献している兄さんは本当にすごいと思う。しかし、そんな兄だからこそ俺の事を嫌っていると思う。理由は分からないが、直感的にそう思う。
亀のブローチをくれたのは、兄さんにとってほんの些細な「お土産」だと思うが、俺はそれでも嬉しかった。

俺の勘違いかそれとも当たってるのか、それは兄さんしかわからないだろう。
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