神童兄 | ナノ
梅雨の話

梅雨は好きではない。
雨のせいで外のグラウンドが使えないし、湿気のせいで髪の毛がボサボサになったり、蒸し暑く感じたりで一番と言っていいほど嫌いな時期だった。今日は台風が接近していると言うことで全部活動が停止になり、いつもより早めに帰宅する事になった。雨は強く、傘をバチバチと叩いてくる。雨音は傘の中で反響し、そこだけが異質な空間と化した。生暖かいと言うか蒸し暑い空気からは雨の匂いはしなく、ただ湿気の多い空気となっている。


「今年もお兄さん来るのか?」


傘を打ちつける音が響く中、霧野のそんな声が微かに聞こえた。
俺はその言葉を聞き、少し気分が沈んだ。もう7月に入るというのに兄さんからの連絡はなにも来ていない。


「どうだろう。まだ何も連絡は来てないんだ」


そう言うと、霧野は「そうか」と言った。
去年は夏休みに入る前に連絡が来たので今年もその辺りぐらいに連絡がくると期待していて、まだかまだかと今も兄さんからの連絡を待っているが、数ヶ月前にメールの返事を出してから何も来ていない。今の時期を超えても来なかった場合は望みは薄く、過度な期待をする程ショックは大きいと思ったので、できる限りしないようにと決め込むことにした。

兄さん、今年は来れないだろう。

次に会えるのは何時だろうと、今に期待をするのをやめた。
そんな事を思っていたら、水溜りの中に足を突っ込んでしまっていた。靴には雨水がじわじわと滲んできては、靴下にも移った。
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