神童兄 | ナノ
タイムジャンプの話

10年前の稲妻町にタイムジャンプして歴史の修復をすると、天馬達が見て回りたいという事で少しだけ探索することになった。とは言っても少々建物が古かったりするぐらいで目新しい物は特に無い。
霧野と商店街の方に歩いて行くと、正面に何処か懐かしい雰囲気を纏った同い年ぐらいの少年がいた。商店街では似つかわしい水兵帽と制服を着ていて、赤い目が妖しく光っているように見える。手には紙切れを持っていて、何かを探すように辺りを見回していたので近寄って声を掛けてみると、予想以上に驚かれて後退りをされた。


「す、すいません。知り合いかと思って…」

「い、いえ…。何かお困りですか?」

「えと…雷門中に行きたいんですけど、知り合いに手書きの地図を貰ったは良いんですけど読めなくて…」


笑いながら少年が見せてくれた紙には、お世辞でも上手とは言えないほどの手書きの地図と文字が書いてあって解読困難だった。最近何処かで似たような文字を見たことがあった気がするがすぐには思い出せなく、そんな重要なことでもないと思って気には止めなかった。すると横から覗いていた霧野が、閃いたように「あ」と言った。


「これ円堂監督の文字じゃないか?」

「…言われれば確かにそうだな」


通りで文字が読めないわけだ、と失礼ながら思った。俺達のいる時代とほとんど変わってないのでうろ覚えで丁寧に道を教えると、相槌を打つ少年の姿に既視感を覚えた。懐かしい雰囲気に謎の既視感、まさかと思って霧野の顔を見たがいきなり自分を見てきた俺に対して不思議そうな顔をしていた。名前を聞いて確かめたかったが、道を聞いてるだけなのに名前を聞くなんて警戒されかねないと思い、勇気が出なかった。


「丁寧にありがとうございました」


お辞儀をしてお礼を言った少年は雷門中のある方向へと歩き出した。少年のどんどん小さくなっていく後ろ姿は空港で兄さんを見送った時と重なり、やっぱりあの人だったんだとそこで確信した。あの人にもこんな時代があったのかと当たり前のことに感動してしまったが、あんな風に笑ったりするのを見るのは今のあの人からは考えられなかった。
もう二度と来ない貴重な体験をしてしまったと思い満足感に浸っていると、霧野が「なんか神童のお兄さんに似てたよな」と言ってきたので更に嬉しくなった。腕時計を見ると集合する時間を迎えそうだったので、背後で少年が光の粒となって消えたことを知らないまま俺達は来た道を辿るように歩き出した。
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