神童兄 | ナノ
クリスマス前日の話

クリスマスから大晦日にかけて休みが出来た。
夏休みに日本に丸々一ヶ月遊びに行き、山のように仕事が溜まっているかと思いきや俺のやることは何一つなかった。
秘書に俺がいなかった時の様子を聞けば「特に何の問題もありませんでした」とだけ言われ会話が終わってしまい、俺がいなくてもこの会社は成り立つのでは…? と自分の存在意義を見失いそうになった。

それから何事も無かったかのように仕事をしていた筈だが、仕事場のデスクに拓人との写真を飾り始めると仕事をするスピードが自然と早くなった。
特に意識的にしてる訳もなく、拓人との写真を見ると何故がやる気が湧き、以前のように中途半端に仕事が終わることが少なくなった。
どうやら俺にとって拓人との写真はやる気の源らしく、早く仕事を片付けてまた日本に行きたいという意欲が滲み出てきてしまっているらしい。その結果がこれで、俺はまた家に帰ることにした。
夏休みとは違い休みは1週間程度だが、拓人と会うなら十分な時間だった。海外籍の会社を立ち上げてからうん年になるが、実家に帰るのは夏休みの時が初めてだった。
会社の方が少し心配だが、夏休みは何事も無かったので今回も大丈夫かな、と思い秘書に「また任せた」と言った。
そういえば秘書にも休暇が必要なのでは? クリスマスから年末にかけて秘書も家族や恋人と過ごしたいのでは?と思い、その話をしたが「社長はこれから休暇を取るのですから余計なことは考えなくて大丈夫です」と言われた。
俺は少し納得いかなく悩んでいたら、秘書に車に押し込められてそのまま空港に連れて行かれた。なんて手荒いやつだ。





日本についたのは12月25日になったばかりの時だった。
取り敢えずクリスマスには間に合ったのでのんびりバスに揺られながら家に向かうことにした。今回家には何の連絡も入れておらず、拓人にサプライズという感じで行きたいと思った。
稲妻町につきバスから降りると、冷たい風を一気に浴びて髪の毛があがる。駅から家まで歩くの面倒臭いな、と思ったがこんな夜中に送り迎えの電話したら迷惑だろうと思い歩き始める。
駅周辺ははクリスマス一色でイルミネーションがチラチラと目に入ってきた。しかしそれも駅から離れてしまえば視界からなくなり、人気のない暗い道に入って無心で歩く。
真冬の夜中は寒いもので、風が強くて服の下まで風が通っているような気がし、寒さで体が強ばる。キャリーケースを引く手は手袋をしていなくて物凄く悴んだ。
早く帰りたいと思いながら、唯一の防寒具であるマフラーに顔を埋めて早歩きで家に向かった。
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