神童兄 | ナノ
吉良の話

「げ」

「その反応少し傷ついたよ」


カフェで暇を潰していたところ、吉良ヒロトに会った。思わず素の反応が出てしまい、少し恥ずかしく思う。
「相席いいかい?」と言われたが俺に有無を言わせず目の前の席に座った吉良。うんともすんとも言ってないんだが、と思いながら座り直す。


「休憩ですか?」

「まあね、ここんところくに外に出てなかったし。久々に出てきて神童くんと会えるなんてラッキーだ」


鳥肌が立つ。なにが「ラッキーだ」だよ、俺はアンラッキーだ。
俺が吉良に苦手意識を持っているのを自ら知っているはずなのに寄ってくるのは、一種の嫌がらせに見える。


「嫌がらせにもほどがありません? 俺が吉良さんに苦手意識を持ってるのはわかっているんじゃないんですか?」

「まあね、でも若社長仲間として是非とも仲良くなりたいじゃないか。あと君をいじるの楽しいし」


いい笑顔をしながら言う吉良は清々しくてムカついた。今度からこいつからの支援全部蹴ってやろうか、と思うほど。
しかし吉良財閥は多大なる権力を持っていて、吉良財閥を敵に回せば全て敵になると言っていい程の周りからの信頼を持っている。あくまで吉良財閥は大切な仕事仲間だ。あくまで。
俺は大きなため息をつくと、気を落ち着かせるように飲み物を一口飲む。


「僕の周りにはむさいおっさんしかいなくてね、同い年ぐらいなんて秘書の緑川しかいないんだよ。君もそうだろう? 若社長仲間って言ったけど、そんなの抜きにして君とはプライベートでも是非仲良くしてみたいな」


吉良は時計を見て「そろそろ行かなくちゃ」と飲みかけの器を持って立ち上がった。


「後、別に敬語とかしなくていいから。権力で格付けされるの嫌いなんだよね。どっちかっていうと僕が敬語する側だから」


またね、と言われ軽く手を振られる。それに返して軽く頭を下げた。
俺はさっきまでの緊張をほぐすように尻を押して椅子にもたれ掛かるように座る。何なんだあの男。
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