神童兄 | ナノ
指輪の話
ハンドメイドが趣味な俺は材料を買ってちまちまと指輪を作っていた。
指輪って言っても大きい宝石を1個つけるだけじゃなくて、金具を使いいろんな飾りを通したりつけたりする。普通の指輪よりかはごちゃごちゃするが、俺はそういう方が好きだ。
そんな作業を今日の朝から夕方までやっていたら、俺の部屋にドアのノックが響く。俺は作業を止めずに返事をすれば、部屋に入ってきたのは拓人だった。
大体予想はついていた。俺の部屋に来るなんて拓人ぐらいなので。
「なんか用か?」
「朝から姿を見なかったので何をしているのかと……」
拓人は俺が作業している机を覗き込んできた。
俺の机の上は沢山のハンドメイド用の飾りがごちゃごちゃと置いてあり、拓人はそれを見て「何を作っているんですか?」と聞いてきた。
「指輪」
俺はそれだけ言って、ペンチでビーズが通されたTピンの先を曲げた。そして俺は顔をあげてため息をつく。
朝から作ってた指輪が完成した。拓人をイメージとした指輪で、音符と猫を主に飾り付けた。
マネキンの手から指輪を抜き取り、試しに自分の指にはめてみた。リングの幅は調整して変えられるし、飾りつけも我ながらに上出来。満足だ。
「すごいですね」
「お前がイメージなんだけどさ、いるか?」
試しに聞いてみた。折角の拓人のイメージだし、まぁ拓人が付けないなら俺が自分で付けるけど。
「えっ」
「お前指輪付ける感じじゃないよな、いらないないか」
俺は今までハンドメイドしてきたアクセサリーの中に拓人のイメージの指輪を入れようとすると、拓人は「ほ、欲しいです!」と言った。
「……そうか、ほら」
俺は手に持ってた指輪を拓人の前に差し出し、拓人の手のひらに置いた。
「まぁ指輪として使わなくても、携帯のアクセにでも使ってくれ」
俺は手をひらひらさせ、拓人に言う。拓人はずっと前にブローチを上げた時のような表情をしてくれた。
そんな拓人の表情を見て自然と笑みが溢れる。