神童兄 | ナノ
写真の話
雷門が練習試合をするということで、拓人に連れられて雷門中に来た。
俺は雷門側のベンチで、日陰に隠れ涼みながら練習試合を見ている。隣には控えの選手とマネージャ、監督さんと顧問さんがいる。
前半後半と終わり、勝利したのは雷門だった。挨拶をしてベンチに戻ってくるサッカー部の皆を見ると、汗だくだけど笑顔で試合が楽しかった事が伺える。
拓人を見つければ、日焼けをしたのか顔や腕が赤くなっている部分が見えた。他の皆も見てみると、赤くなっている奴は拓人以外にも数人いる。
一人一人がドリンクやタオルをベンチで持っていき汗を拭いたり水分補給をしてる中、俺は拓人の所へ行こうとした。
しかし、他の部員のこと話してるようだったので、立ち上がったものの再び座った。すると拓人の方から俺に向かってきた。
「おつかれ」
そう言ってあげると、拓人は「ありがとうございます」と言った。
拓人が手に持っているタオルを手に取り、俺は拓人の頬にそのタオルで拭く。
「赤くなってるぞ。ちゃんと冷やせ」
「あ、ありがとうございます……」
顔がタオルで覆われてどんな表情をしているのか分からないが、照れてるのはわかった。
すると、隣でマネージャーの女の子が「神様……」と言いながら拓人をデジカメに収めている。
「拓人すごいな、ファンがいるのか」
「え、いや……」
少し笑いながら言うと、拓人に目を逸らされる。
するとまたシャッター音が聞こえた。
「神様と神様のお兄様……すごいレアな神様……」
「ねえ君」
三つ編みの女の子に声をかけた。
「!……神様のお兄様」
「よかったらさ、さっき撮った写真一枚くれない?」
俺と拓人のツーショットなんて今まで生きてきた中で小さい頃に撮ったやつしかない。
持ち帰るようとして一枚欲しいと思ったのだ。
「も、もちろんです……! 神様と神様のお兄様のために二枚用意しますね」
三つ編みの女の子に笑顔で「ありがとう」と言うと、俺は心の中でガッツポーズをした。
「お、おい茜!」
「茜さん大丈夫ですか!?」
「……神様のお兄様……神様よりやばいかも…」