神童兄 | ナノ
将来の話

俺が二十歳になってから親は俺にお見合いをさせた。
日本の財閥の中から神童財閥と手を組んでいる財閥に片っ端から俺のことを売り込み、相手を説得させた。
最初は少し楽しみだった。相手も財閥の娘だし、それなり可愛い子なんだろうなと思ってた。しかし、実際あってみると理想とは大幅に違った。
どの女も香水をたっぷり付け、顔には濃い化粧をして、高そうなアクセサリーをジャラジャラ付け、煌びやかなドレスを着て俺の前に来た。
会ったらあったで俺に媚を売り、初対面なのにベタベタ体に触ってくる女もいた。どいつもこいつも不愉快なやつばっかだったので、後半になってからは会うことすら拒否した。
母親はしつけや勉強の面では厳しいが、日常生活では普通に優しい人だった。「無理にお見合いしなくてもいいのよ」と言ってくれたが、父親はそれを反対した。
しかし、当時の俺はお見合いなんてもうゴメンだったので、そこで俺が海外籍での社長になる話を切り出し、次期当主を拓人にした。
拓人ならいい女だって見つかるだろうし、例え変な女に捕まっても俺が払い除けてやる。
多分俺は一生結婚しないしこのまんまなにもない限り海外籍で社長をやっていると思う。


「兄さん」

「ん?」


拓人に呼ばれ、俺は少しあくびをしながら返事をした。
暇だと眠くなくてもあくびが出るが、あくびが出るせいで眠気が誘われる。


「企業をまとめるのは大変ですか?」

「なんだいきなり」


いつもみたいに「アイス食べますか」とか「何読んでるんですか」とかじゃなくて、まともそうな事を聞いてきた拓人。


「俺も、いずれかはこの家に当主になります。そう考えると不安になるんです。俺が父さんや兄さんみたいに企業をまとめられるかどうかを……」


俺の目を見て真剣な顔をして言う拓人に、俺はしばらくの間目を逸らさなかった。
少しばかり無音の間が続くと、俺は拓人の頭を思いっきり鷲掴みした。


「今のお前はまだそんなこと考えなくていいんだよ」

「でも……」

「でもじゃない。今を思いっきり楽しめ。まだ中学生なのにそんなこと考えてちゃストレス溜まるからな。父さんはまだしぶとく生きそうだし、お前に甘いからそのうち教えてもらえるさ。だから心配すんな」


拓人の頭を軽く押して離した。拓人は少し仰け反る。
拓人は俺の顔を数秒見て「わかりました」と言うと自室に戻っていった。お前にはまだ考えるのは早い。
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