神童兄 | ナノ
昔の話

拓人に連れられて雷門中に来た。拓人の練習してる姿見たいと言ってみれば素直に誘われ、いい機会なのでその話に乗った。しばらく校庭の隅でサッカー部の練習風景を眺めている。
皆一所懸命に練習をしていて、とても楽しそう。


「神童くんから聞きました。お兄さん、ですよね?」


横からウェーブのかかった髪の毛の人が話しかけてきた。
その人は音無先生と言った。出身中学が雷門中らしく、10年前全国制覇をした雷門イレブンのマネージャーをしてたらしい。
それからいろいろ聞いた。今のサッカー部の状況とか、皆の心意気とか、中学生ながら本気で戦っていて、サッカー界の革命をしようとしているとか。


「すごいですね。役に立たない大人と比べたら立派ですよ」

「本当ですよね。だから私もあの子達を見て、全力で支えてあげようって思ったんです」


音無先生は、手を胸に当てて何かを誓ったかのように言った。
この先生はいい人だ。上からの命令に言いなりになってる奴らとは違って、生徒を心から信頼し、正しい道へ導いてあげている。


「音無先生はいい指導者ですね」

「え……そそんなことないですよ〜……」


先生を見れは少し照れた様子で言った。ここまで直向きな指導者に出会えたのは初めてかも知れない。


「サッカー部の監督は私の兄なんです」

「円堂監督さんですか?」

「いえ、円堂監督はとある事情で少しの間ここを離れているんです。その代わりに私の兄が来たんですよ」


音無先生の視線を先には、ゴーグルをつけたドレッドヘアーの人がいた。


「お名前は?」

「鬼道有人って言うんですよ」

「……鬼道財閥の?」

「はい」


鬼道と音無、苗字が違うところに首は突っ込まなかった。音無先生は女性だし、結婚でもして変わっただけだと思う。
鬼道という名前に聞き覚えがあり、今ピンと来た。中学生の頃の全国模試で、俺が一回だけ負けた奴の苗字だ。連続で一位を取っていた俺は優越感に浸ってそのときは少し勉強をサボっていた。それで一位を鬼道とか言うやつに奪われてしまい、勉強を怠ったことを後悔したのを覚えている。まぁそれだけのことなのだが。


「今、神童くんのお兄さんが来てたのよ!」

「神童光貴か?」

「ええ、知り合いなの?」

「いや、よく目にした名前だからな。嫌でも覚える」

「?」

「昔の話だ」
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