「メンテナンスのご予約をされた苗字様ですね。あちらにあるエレベーターを使って7階にどうぞ」

受付のお姉さんにそう言われ、私達は首からゲストのプレートを下げて奥のエレベーターに向かった。
先日みつきを作った会社から珍しく郵便が来て、内容は半年に1回はメンテナンスをしなければならないと言う事だった。多大な金がかかるかと思いきや修理等がない限り無料とあったので、早いうちに済ませてしまおうと思い休みを使ってみつきを作った会社まで来た。来るのが無理な場合は最初に送られてきたダンボールに入れて着払いでも良いと書いてあったが、そんなに遠くもないので直接来る事にした。

この会社に勤めている人達に紛れながらエレベーターに乗り込んで7階を押し、着くのを待つ。慣れない場所で少し緊張していると、みつきの方から手を更に強く握ってきた。驚いてみつきを横目で見れば、同じように横目で見てきて軽く微笑まれた。私のびしょびしょな手汗で緊張してるのを察知されてしまったのだろうか、だったら恥ずかしいなあ、なんて体温が上がっていたら7階に着いたので、私達はそそくさと降りた。
何処でやるのか全くわからないが取り敢えず歩いて行ってみると、人影を見つけたので声を掛けた。

「すいません、この子のメンテナンスをしに来たんですけど」
「ああ、苗字さんですね、お待ちしておりました。ご案内します」

こちらへどうぞと言われてこの人の後をついて行くと、会議室なような部屋に案内された。荷物を置いたら私は此処で待機をし、みつきだけが隣の部屋に行くらしい。メンテナンス、どれくらいかかるんだろうと思いながらスマホを弄り始めようとした所、ノックも無く会議室の扉が開いた。

「あれ? お客さん?」

入ってきたのはみつきと顔付きがよく似ていた子だった。唯一違うのは頭に付いているのが猫の耳では無く、兎の耳だと言う事。その子は私に近づいてくると、見覚えのある笑みを浮かべた。

「お姉さん暇でしょ? ボクとお話しようよ」

ね? と首をかしげて聞いてきて不意にも可愛いと思ってしまったのと、どうせ暇だし、という理由でその話に乗ることにした。
お話をする前に少年に軽く自己紹介してもらうと、この子もみつきと同じアンドロイドと言うことがわかった。通りで顔がめちゃくちゃそっくりだと思ってジロジロ見ていると「見すぎだよ〜、えっち…」とモジモジしながら言われた。ええー!! こんな事も言えるんですか!! うちのみつきとはかなり性格が違うようで、別個体とは分かっているが同じ顔で言われるとみつきに言われたように思えてめちゃくちゃドキドキして心臓が辛い。

「……そう言えば君の名前は?」
「ボクはまだマスターがいないから名前無いんだ〜、呼ばれるとしたら兎型とか003って呼ばれるよ。ボクも早くマスターが欲しいなあ」

そうか、みつきは私が名前を付けたからみつきと言う名前があるわけで、私のようなマスターがいない子には名前が無いのか。そう思うと、何だか地雷を踏んでしまったような気がして申し訳なくなった。
「なんかごめんね」と謝れば、「謝る必要無いよ〜」と可愛く言われた。

「あ、お姉さんボクのマスターになる気ない?」」

唐突の提案に一瞬硬直したが、冗談かと思って笑い飛ばしたら「ボク本気だよ?」と上目遣いで言われた。反則だよ。

「で、でも私他の子がいるし……」
「大丈夫! 仲良くするし、2人いれば今より更に便利になるよ!」

ね? だからお願い。と語尾にハートマークが付きそうなお願いをされ、つい私の心が揺らいでしまう。いや、私にはみつきがいるし、みつきだけで充分だ。しかしこの子めちゃくちゃ可愛いし、マスターがいないってのも少し可哀想な気がする。いや、でも……なんて思っていたら、また会議室のドアが開いた。

「……何してるんですか」
「じゃ、考えといてね〜!」

兎の子はそう言うとみつきとすれ違うように部屋から出て行った。何だか散々掻き回しといて嵐のような子だったなと思っていると、みつきが少し膨れっ面になっていた。

「…003と何を話してたんですか?」

いつもはお節介を焼いてくれるお母さんのようなみつきが子供みたくなっていて、何だか笑ってしまった。そんな私にみつきはさらに怒り、さっきあった事をきちんとを話してあげても不機嫌なままだった。もしかして嫉妬かな、なんてニヤニヤしていたら今度は口を聞いてくれなくなった。


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