最近残業続きで帰るのが遅くなり、家に帰っては風呂に入ってすぐ寝る生活を送っていた。
みつきが家のことを全てやってくれるので帰ったらすぐ休めるのはとても有難いが、それと同時にみつきと言葉を交わすのが明らかに少なくなっていた。
朝はみつきが寝ている間に家を出て、昼はみつきに作ってもらった弁当を食べ、夜は作りたてのほかほかご飯を風呂上がりに1人で食べる。
以前よりも働きが多いせいか充電の減りが早いらしく、昼の間はたっぷりと充電をし、私が帰ってくるころに家事をやり始める。
みつきは私に合わせて昼と夜を逆転させていて、有り難みと同時に申し訳なさを感じた。


明日から2、3日休みを貰い、私はウキウキしながら会社を出た。
何をしようか、と思いを馳せながら電車に揺られると同時にみつきのことを思った。
取り敢えず家に帰ったらお礼を言おうと心に決めて、一眠りしようと目を閉じた。

家のドアを開けると、いつもよりも静かな家の中に少し不安を感じた。
寝室に行けば真っ暗になりかけの空に仄かに照らされて寝ているみつきがいた。
私はそれを見て安堵し、荷物を置いて部屋着に着替えた。
すやすやと眠るみつきを起こさないようにキッチンに移動し、冷蔵庫を見る。
中は自分では買った覚えのない野菜や肉がほどほどにあり、買い物までしてくれてたのか、と涙が出そうになった。
今日は自分で作ろうと思い肉と野菜を適当に出して炒め、炊いてあったご飯と一緒にテレビを見ながら食べた。
久々の手料理はみつきのご飯より美味しくはないが、のんびりと食べれて満足感は味わえた。
ご飯の後は風呂に入り、髪を乾かすために寝室からドライヤーをこっそりと持ち出そうとした。
するとドライヤーの入ってたカゴを床に落としてしまい、その音にビビる私と一緒にみつきの耳と尻尾がピーンと伸びた。

「!……マスター、帰ってたんですね」

寝起きと言えどハキハキと喋るみつき。
まあアンドロイドだし睡眠モードだったのかな、と自己納得。
みつきは私の濡れた髪を見て「もうそんな時間でしたか、髪の毛乾かしますね」と布団から起き上がった。
私はその言葉に甘え、みつきに乾かしてもらうことにした。
みつきの人間ぽい肌触りの指が私の髪の毛1本1本を手入れしてするりと梳かす感じで、とても気持ち良かった。
乾かすのが終わると、誘われていた眠気が一気に引き戻された。
ドライヤーの線を束ねるみつき。私はみつきをじーっと見ては頭を撫でた。

「どうしたんですか? マスター」

みつきは少し首を傾げながら不思議そうに聞いてきた。

「え、えっと……ここ仕事で大変な中、家のことをやってくれてありがとう…!」

ちゃんと面と向かってお礼の言葉を言う機会があまり無いため、改めて言うのが恥ずかしく感じる。
恥ずかしさを誤魔化してえへへと笑えば、みつきはネコ目を細くさせた。

「ありがとうマスター、ボクとっても嬉しいです……。マスターにありがとうと言われて、ボクはとてもここが暖かく感じます……」

みつきは自分の胸を一撫でし、背後では尻尾が揺れた。
私も心が暖かくなって、みつきの頭を撫でたりほっぺをベタベタ触りまくれば、「くすぐったいです〜」と困り顔で笑いながら言った。
私はとても癒され、今日はよく寝れると悟った。


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