神童兄 | ナノ
不安の話

休日の部活動が終わる時間は平日と比べてかなり早いが、その分朝の9時から練習しているので活動時間は長い。ここ最近はほとんど体を動かしていなかったので体力も落ちており、長時間の運動はかなりしんどくてすぐに息切れをしてしまう。今は皆の足を引っ張らないようにと技術面で体力面を補っているがいつまでもそのままではいられないので、練習後はいつも1人で学校の周りを走っていた。今日も少し走り込みをしようと思い、皆が荷物を持ってロッカールームに向かう中僕はベンチに座って水分補給を取りながら休憩していると、隣に誰かが座ってきた。


「大丈夫か?」


それは成龍だった。1回ロッカールームに行って戻って来たのか、僕のタオルを手に持っていてそれを渡してくる。受け取って首元や額を拭けば、微かに吹いている風が僕の火照った体を冷まそうと汗を冷やしてきて、少し寒く感じた。


「なんかもう、自分の体力の無さに驚いちゃうよ」


昔、テニスをやっていた時も体力が無くそれが要因となって負ける事が多く、サッカーみたいな長時間走り回るスポーツは向いていないと今改めて思う。僕は隣に座る成龍に視線を向けてそれを言おうとしたが、その真っ直ぐで汚れのない瞳を見て意地が無く情けない自分に申し訳なくなって何も言えなくなってしまい、視線を逸らした。


「……そう言えばこの後同学年の皆で少し寄り道するんだ、光貴も行かないか?」

「…僕も?」


成龍からの急な誘いに僕は少し驚くと、成龍は詳細を言い出した。どうやら同学年の皆でラーメンを食べに行くらしく、どうせなら僕も誘おうと言う話になっているらしい。僕はそれを聞き、嬉しく思う反面不安になった。僕が皆のプライベートでもある食事の部分に踏み込んでしまって良いのだろうか、中には大して喋ったこともない人もいるのに、僕なんかが。そう思い悩んで黙っていると、「ほら」と立ち上がった成龍に手首を掴まれて引っ張られた。


「皆お前を待ってるんだ、早く着替えるぞ」


強引に引っ張られると、僕もベンチから立ち上がって強制的に走らされる。既に頭の中は不安に侵されていて今すぐにでも手を振り払って逃げ出したい所だが、僕に成龍の手を振り払うなんて出来ない。何も起こらないようにと祈る事しか術は無く、一歩一歩踏み出している鉛のように重くなった足の裏がいつの間にか痛くなってきていた。
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