神童兄 | ナノ
テストの話

担任の先生に名前を呼ばれたので俺は返事をすると、教卓の近くに行って厚紙を貰った。俺は自分の席に戻ってその紙を開き、今学期の欄にこの間のテストの各点数と合計点が印刷されているのを見ると、初めての定期テストにしては良い点数を取っていたので少し嬉しくなった。そして右のページに視線を移せば、そこには今学期の上位3名の名前と点数の他に、下位3名も名前を伏せてはいるが点数が公表されていた。どちらにせよ晒される身からしたら恥ずかしい物で、既にわかりきっている事だがその両方に俺の名前は記されて無い事を安堵した。その代わり1位の欄には神童光貴の名前と獲得点数が記されており、「流石光貴だな」と心の中で感心した。


「なあ、この1位の神童光貴ってこの間は水神矢が連れてきたアイツだっけ」


斜め前の席に座る折緒がこちらを振り向くと、順位の欄を俺に見せながら聞いてくる。俺は「ああ」と返せば、折緒は少し驚いた表情をして興味無さそうに「へえ〜…」と呟いた。


「498点なんてほぼ満点じゃん」

「最初のテストだから比較的簡単なんだろう。全体的に平均も高いらしいし」


その下にある2位の点数を見れば1位との点数とそんなに大差はない。今回はきちんと勉強をしていれば満点を取れるテストだったのだろう。折緒はそれを聞くと、「確かにな…」と納得したように自分の点数を見ながら言った。
暫くして先生がいきなり明日の話をしだすと折緒は前を向いた。テストが終われば次は運動会のシーズンになるから一致団結して頑張ろうという話を聞かされ、最後に気を付けて帰るようにと言われれる。そして日直が号令をかけて挨拶をすると、クラスメイト達は鞄を持って続々と教室から出て行った。俺も紙を折り曲げない様に鞄の中に入れて肩に掛けると、後に続く。今日は部活が無い日なので真っ直ぐ下駄箱に行けば、そこには既に光貴が靴に履き替えて待っていた。俺を見掛けると少し嬉しそうな顔をし、傍に寄ってくる。


「凄いな、テスト1位だったじゃないか」

「僕も驚いたよ。しかもミスしたのが英語のスペルだけだったし」


今日は少し褒めてもらえるかも知れない。いつもより柔らかい表情で言う光貴に俺も笑みで返したかったが、複雑な感情を抱きながら「十分凄いよ」と言った。
その次の日、光貴の表情が打って変わって暗くなっていた事を俺は知る由もない。
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -