それから俺達はリンカの家を出て、山梨に行く前にショッピングモールに向かった。霜月もつい先程指名手配犯として報道されてしまい、今の格好のままでは2人共外を自由に歩けないという事で変装道具を買いに来た。最初はリンカだけを買い物に行かせて俺達は車で待機するつもりだったが、リンカが車を降りようとドアを開けようとした所、駐車場にいたる所に警察官がいて車を一つずつ確認しているのがわかった。そのまま待機をしていたら警察官がこっちに向かって来そうだったので俺達は決断すると、急いで車を降りてショッピングモールの中へと逃げ込んだ。



「ここでちょっと待ってて!」


建物の中に入って息を整えている俺達にリンカはそう言うと、再び走り出して近くの店に入っていった。そして数分で出てくると、リンカは買い物袋から簡易的な変装道具を取り出しては2人に渡した。新村には可愛らしいパンダの帽子を、霜月には色違いのパーカーと首に下げていたヘッドフォンを装着させ、以前の2人の特徴を上手く隠すようにさせた。人間は第一印象を色や目に付く物で捉える所があるので、一時的には良いと思った。


「はは、似合ってるよ」


新村と目が合ったのでパンダの帽子の耳の部分をつまんでそう言えば、少し嫌そうな顔をされた。そしてそのまま普通の変装道具を探しに行こうとすると、目の前から数名の警察官が歩いてくるのがわかった。警察は辺りを見回しながら歩いていて、このまま知らん顔で素通りしても特徴を隠していようが顔を見て一発でバレてしまうだろう。俺達は何処か隠れる場所はないかと辺りを見回すが、大きなショッピングモールの中ではそうそう死角になりそうな所は少ない。すると新村は霜月を呼び、すぐ側にあったマネキンに寄り添ってはポーズを決め始めた。まさか、こんな状況下で彼らはマネキンのフリをするつもりなのだろうか。俺はそんな2人に思わず盛大に笑ってしまいそうになったが、彼らは真剣なんだろうと悟ってリンカの腕を引くと、近くのレディースブティックの中へと入っていった。


「……ふふ…マネキンのフリ…面白いなあれ…」

「私も思ったけど光貴くん笑ってる場合じゃないから……」


俺は店の中から外の様子を伺っていると、その横でリンカは服を選んでいた。適当な物を手に取っては腕に掛け、トップス、スカート、靴と洋服一式を俺に持たせてくる。


「……まさか」

「そのまさかよ」


リンカは小悪魔そうな表情で俺に視線を送りながら言った。
俺達はとっとと買い物を済ませて新村達の所に戻ると、再び警察官とすれ違うスリルを味わいたくないので素早く車に戻った。戻る最中では警察官と鉢合わせしなく、駐車場にうろついていた人達もいなくなっていたのでスムーズに行けた。俺は運転席に乗り込んでシートベルトを装着しようとすると、助手席から座ろうとしていたリンカが「運転変わろうか?」と聞いてきた。


「光貴くん昼からずっと運転して疲れてるだろうし、私も一応免許持ってるからね。っていうかこれ私の車だけど…」

「…いや、いいよ。山梨って言っても距離あるし、今から向かったら着くのは朝方だしな」


車のエンジンをつけながら言うと、リンカは「そっか…」と少し納得してなさそうな表情で頷いた。折角の好意を突き返してしまい、心の中で少し申し訳なく思いながら車を動かし始めると、山梨方面に向かって車を走らせた。

最初は会話が飛び交っていた車内もいつの間にか静かになっており、赤信号で停まった時に助手席を見てみれば、リンカはドアに寄り掛かりながら寝ていた。ルームミラーで後部座席も見てみると霜月はリンカと同様寝ていたが、新村は腕を組みながら窓の外を眺めていた。少し空いている窓から入る風で前髪が靡いていて、その表情は何か考え事をしている様子だった。折角起きているのなら俺の眠気覚ましのために他愛もない会話を交わしたい所だったが、話題が浮かばないのでまたの機会にする事にした。


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