今日は週刊誌の記者から取材を受ける日だった。数日前に学校の帰り道に出くわし、あの事件の悲惨さ、僕達の苦しみを世間に伝えたいために依頼しに来たらしい。それを知ってもらえば世間の意識は変わるとか言っていたが、どうも胡散臭い。事件が起きてからメディアに対しては悪い印象しかなく、この記者の人も正直良い人そうには見えなかった。
しかし姉さんはその取材を受け入れることにしてしまった。僕達の取材で同じような人の心が軽くなるかもしれない、信じて見ようと言われて何も返せなかったが、歪んだこの世でそんな綺麗事が今更通じるとは思えなかった。そんな心情のままこの日を迎えてしまい、僕は早く終わることだけを考えていた。
光貴さんにはこの事を伝えていなく、取材も学校の帰りに行われる予定だったので知る由もない。姉さんは少し楽しそうに「光貴さんを驚かせよう」と言ったが、僕は笑みを返すことができなかった。

取材の内容は最初に聞かされていた通りあの事件に関する事だった。答えていく中、事件直後の感情が呼び覚まされそうで少し息が苦しくなった。そして質問に答え終わると今度は写真を撮られたが、上目遣いにとか寄り添ってなど、綺麗に写真を撮る指示で普通なんだろうが、今の僕にとってはそれが少しだけ癇に障った。写真を撮り終わると記者が続けて何かをしてきそうだったが、僕が遮ると記者はすんなり身を引いた。取材が終わって雑誌の発売日を教えてもらうと、記者はそのまま帰って行った。一時間足らずの取材だったか、気を張りすぎていたのかとても疲れてしまった。
家に帰れば先に光貴さんが帰って来ていて、ソファーでくつろいでいた。僕達を見るといつもの笑みで「おかえり」と言ってくれ、少し新鮮だった。


「今日は遅かったな。何かあったのか?」

「あー…ちょっと学校の用事で、ね。姉さん」


姉さんに話題を振ると、姉さんも「そ、そうだったね」と少し戸惑いながらも言った。姉さんはさっきの戸惑いを誤魔化すように「晩御飯の準備しなきゃ!」と言い出して部屋に行くと、荷物を置いてすぐさま取り掛かった。姉さんはわかりやすいなあ、なんて口角が少し上がってしまい、僕も荷物を置いてこようと部屋に行った。制服では窮屈なため私服に着替えてリビングに行くと光貴さんの姿が消えており、台所を覗けば光貴さんが姉さんの料理をする姿を興味津々で見ていた。少しだけやりづらそうに見えたが、その表情は何処か楽しそうだった。


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