小さい頃の記憶、僕達姉弟にはとても仲の良い年の離れたお兄ちゃんがいた。親同士の仲が良く、家に行くたびによく遊んでもらったり、勉強を見てもらった思い出がある。そんなお兄ちゃんは高校を卒業してから一人暮らしを始め、それ以来会う機会は無くなってしまった。当時僕達は中学校に上がる直前の子供だったので会いに行こうにも距離が遠く、場所もわからなかった。もしたとえ会いに行ったとしてもお兄ちゃんに迷惑が掛かるだけだろうと思い、諦めてしまった。

それから時が経つにつれてお兄ちゃんの事はすっかり忘れていたある日、僕らの部屋のテーブルの上に切手の貼られた茶封筒が置かれていた。親戚にたらい回しにされている僕らに手紙が届くなんて初めてで、誰からだろうと封筒の裏を見ると知っているようで知らない名前が書いてあった。姉さんに聞いても覚えはあるようだが誰だかはわからないようで、とりあえず中身を見ようと封筒を切った。そこには一枚の手紙が入っていて、2人で読み始めた。


「この手紙、僕達を引き取りたいって書いてある……」


それはとても嬉しい内容だった。僕達の両親の事件を見て取り残された僕達を引き取りたいとずっと思っていたらしいが、親戚にたらい回しにされていたので今まで居場所が掴めなかったと僕達に謝る文面があり、なんだか涙が溢れてきた。世間に対しての怒りや僕らに対しての周囲の扱いで擦り切れていた精神が癒されていくようで、僕らはまだ神に見放されていなかったんだと思った。


「これ…小さい頃よく遊んでくれた光貴お兄ちゃんだよ……絶対そうだよ……」


姉さんが封筒の名前を見ながら涙声でそう言ったのを聞くと、その名前を見てやっと思い出した。手紙の最後には電話番号が書いてあり、良かったら声だけでも聞かせてくださいと書いてあった。僕達は今すぐにでも電話しようと思ったが、携帯電話なんて持っていないし、僕達をしょうがなそうに引き取ってくれている家の人の電話を借りようとしたが、居候のくせに何を言っているんだと言われてしまった。僕はそんな人達にとても腹が立ったが、怒りを抑えて手紙を大事にポケットに入れると、姉さんと一緒に公衆電話を探しに暗くなりかけている外に歩き出した。
30分ほど歩いた所でやっと公衆電話を見つけ、受話器を取って僕達の唯一の持ち金である10円玉を入れて間違えないように電話番号を打ち込むと、呼び出し音が鳴った。


「もしもし」


受話器越しから聞こえてきた声に、酷く懐かしさを感じた。


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