━━━━そういう事があったんですね。お辛かったでしょう」


先生に自分の事の様に言われて少し癪に障ったが、俺はそれを抑えて「はい」と言った。あれがあって放心状態で眠った次の日、2人の姿は荷物と共に無くなっていた。通っていた学校に行っても、何処を探しても姿は見当たらなく、俺はまた失敗してしまったのだと思った。何で、俺はどうして他人と仲良くする事が出来ないんだろう。あの時、俺はリンタロウの言った通り違うなら違うとちゃんと言えば良かったのに、またやらかしてしてしまった恐怖で何も出来なくなっていた。必死に状況を整理して息をするのが精一杯で、返答する事まで気が向かなかった。それが杭に残っていて、あの時動けなかった自分を頭の中で何回も滅多刺しにしているが、気が収まった事は一度もない。そんな事しても一生晴れることは無いとわかっているが、それでも繰り返していた。


「無理に復帰しようとすると余計心に負担が掛かってしまうのでゆっくり行きましょう」

「はい、ありがとうございます」


俺は椅子から立ち上がると、先生に軽くお辞儀をして診療室から出た。そして会計などを済ませて建物から出れば、車に乗り込んで大きなため息をついた。先程までいた建物を見れば外観は白くて清潔そうだが、それで汚い物を隠しているように思えて嫌になった。


2人が出て行ってしまった今でも俺はあの家に住んでいた。母さんには「自分のためにも戻ってきなさい」と言われたがそれを拒否し、俺はあの2人がいつ戻って来ても良いようにと住み続ける事にした。母さんは頑固反対していたが、俺のためにとしょうがなく許してくれた。それから暫くは有給を使って心身ともに休ませると共に何か手がかりはないかと2人の部屋に入ろうとしたが、何故だか自分の体が拒否反応を起こしてしまい、未だに入れずにいた。他にもリビング等に散りばめられていた2人がいた証拠を見てしまうと同じような症状を引き起こしてしまう事がわかり、全て片付けて2人の部屋の中に入れた。傍から見たら、見たくない物を隠しているようでとても嫌な気分になったが、自分の身を守るためにもこうするしかなかった。

結局、俺はあの2人に拒否をされても心の支えに変わりはなかった。先生に「忘れたほうがいいかも知れない」と言われて催眠療法をおすすめされたが、あんな事があっても俺は2人と過ごした日々や過去の思い出に浸っていたかったので断ると、先生に少し呆れられたような表情をされたが、「そうですか」と優しく言われた事を覚えている。

多分、俺は自分が幸せになれなかった分2人に幸せになって欲しかったんだと思う。昔から優しい姉弟で、俺の事をお兄ちゃんと呼んで慕ってくれる姿が可愛く、いつもその姿に勇気づけられていた。だからこそあんな悲惨な状況から救ってあげたく、今度は俺が2人を勇気づける番だと思っていたが、何処かで道を踏み外してしまったようだ。過ぎた時間はもう、巻き返すことは出来ない。
だからこそ、俺はまた再び2人と会えた時のために用意している言葉がある。今度こそ言いたい事をハッキリと言えるように、最初からやり直そうと言う意味を込めて、


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