「あ、あの、おじさん! お誕生日、お、おめ」

「あらやだ、うちの子緊張し過ぎて噛み噛みね」


後ろから聞こえる母さんの声に、俺の体は余計に熱を帯びた。普段なら「茶化すなよ!」と感情に任せて怒鳴りたい所だが、今は森一家がいるのでそんな事は出来ない。俺は自分の唇を噛み締めて怒りを抑えると、深呼吸をして仕切り直した。


「お、お誕生日おめでとう、ございます…」

「うん、ありがとうね、男主くん」


おじさんはいつもの柔らかい表情で微笑み返してくれ、俺も釣られて笑みを零した。それで用意していたプレゼントを渡すと、俺は咄嗟にリンタロウ達の所に行って2人を盾にした。


「お兄ちゃん顔が真っ赤だよ?」


リンタロウが振り向いて俺の顔を見てきては心配そうに見てくる。俺は「何でもないよ」と頭を撫でてあげれば、隣にいたミサキちゃんも頭を撫でて欲しそうだったのでもう片方の手で撫でてあげた。


「お、ネクタイピンか! 持ってなかったから嬉しいよ」


早速プレゼントを開けて中を見ているおじさんに、俺はそう言われてとても嬉しかった。ネクタイにしようかと思ったが案外高く、いまいちピンと来る物が無かったので諦め、一度も付けている姿を見たことない物を買った。「高かったんじゃないか?」と聞かれたが、俺は全然、と笑顔で言うと、母さんがおばさんに向かって「あの子自分の小遣い使い果たしたのよ」と耳打ちしているのが聞こえた。やめて、そんなネタばらししないで。