私が毎日通いつめている宇宙センターに学生服を着たお兄さんがいる。
学生服の上に宇宙センターの職員の服を羽織っていて、職員の皆さんと仲が良さそうだ。
実はその人目当てでここに来てるって言うのもある。
でも私自身宇宙や星が好きだ。毎日ここに来るたび、一日の疲れが取れていく気がして、いつ来ても飽きない。
今日も学校帰りに宇宙センターに寄った。
いつも通り下の階から順に見ていく。受付のお姉さんや、職員の方々に会うたび「今日も来たんですね」と声をかけられることもしばしば。
そろそろ年間パスポートでも買ったほうがいいかな。


「アンタ飽きないわね」


ロボットのコーナーでポンコとお話をしていたら、声をかけられた。
その声の持ち主は夕神かぐやさん。
ここの職員で、私の目の前にいるポンコやポンタを作った人の一人だ。


「見ていて楽しいですから」

「アンタ、ホント年相応に見えないわ。まあそんなところが気に入ったんだけどね。研究室で茶でも飲む?」


あの事件がまだ起こってないので、画面の前とは正反対ってぐらいに優しい人に思える。
いや、これがかぐやさんの普段の性格なんだ。
私は返事をすると、かぐやさんの後についていった。


「適当に座っていいわよ」と言われ、近くの椅子に腰を下ろす。

「今日真里さんはいないんですか?」

「ああ、真里は隣にいるよ。自分の娘と一緒にね」


かぐやさんが「娘」と言う言葉を言うとき、いつもの優しそうな感じよりピリピリとした空気を感じだ。
嫉妬してるんだな、と思った。
今はこの程度ですんでいるが、少ししたらこれは憎しみに変わるのかと思うと悲しくなった。


「最近は私の弟もここに来ててね、真里に心理学を学んでんのよ」

「心理学、ですか」

「そ、弟検事だから法廷で心理学を取り入れたいとかなんとか」


のちのユガミ検事になる人だろう。
そう思いながら「すごいですね」と言った。
不意に窓の外を見れば夕日が落ち、空が青くなってき始めた頃だった。


「もう六時ね、お帰り。アンタは一応中学生なんだから」

「はい、お茶ごちそうさまでした」


カバンを背負って軽く頭を下げ、研究室から出て行った。
去り際には「気をつけて帰るのよ」と言われた。
一般人には通れなさそうな職員専用のルートを使って出口まで行く。
たまに職員の人とすれ違う時もあるが、「気をつけて帰れよ」とか「夜道に気をつけろ」とか言われたりして怒られはしない。
多分かぐやさんが私のことを皆さんに話してくれてるんだろう。
するとそこで宇宙飛行士の星成太陽さんに会った。


「お、夕神の所の子じゃないか」

「まるで私がかぐやさんの子供みたいな言い草ですね」

「ハァー年相応に口が達者だからか夕神と性格似てきたんじゃないか?」


ははは、と笑う星成さん。