「お兄ちゃん…これ……」


母さんの背後に隠れ、恥ずかしそうに綺麗に包装された箱を差し出してきたミサキちゃん。今まで見た事がないぐらい顔が火照っていて、髪の毛を結っているリボンと同じぐらい赤かった。母さんはそんなミサキちゃんに対して「あらあら」と笑っていて、ミサキちゃんを自分の背後から引っ張り出すと、俺の目の前に出してきた。


「おばさんと沢山練習したから大丈夫よ」


母さんが優しくミサキちゃんの背中を撫でると、少し俯向きがちだったミサキちゃんの顔が俺の方を向き、再び箱を差し出してきた。俺はミサキちゃんと同じ目線になるようにしゃがんでそれを受け取ると、「ありがとう」と微笑んでいった。するとミサキちゃんも真っ赤な顔をしながら微笑み返してくれた。


「お兄ちゃんにあげたくてお母さんと作ったの…!」


そう言うミサキちゃんに俺は箱に対する興味を高めると、何が入っているんだろうと箱に結んである赤いリボンを解いて開けた。するとそこには4つのチョコレートが入っていて、お店に並んでいる物見たく綺麗で美味しそうだった。「美味しそうだね」と言ってあげれば、ミサキちゃんは照れ隠しをするように笑い、とても可愛らしかった。するとミサキちゃんはチョコレートに指を指すと、説明を始めてくれた。


「これがビターで、これが普通ので……」


たどたどしく説明してくれるミサキちゃんに対して俺は頷きながら聞いていると、ふと視線を逸らした先で母さんと目があった。こちらを見てはニヤけていて、その後ろではミサキちゃんのお母さんが微笑んでいた。俺はその時やっと自分の顔が緩んでいた事がわかり、こんな表情を母さん達に見られていた恥ずかしさで一瞬真顔に戻るが、ミサキちゃんに「食べてみて」と言われてチョコレートを差し出された。俺はそれを手で受け取ろうとしたが、ミサキちゃんに「あーん…してくれる?」と言われ、羞恥が爆発しそうだった。


「口開けなさい男主。ミサキちゃんの行為を無駄にするつもり?」


相変わらず母さんはニヤけながら言った。その後ろにいたはずのミサキちゃんのお母さんはいつの間にか母さんの隣に移動していて、俺と視線が合えばガッツポーズをしてくれた。全然嬉しくないです。もう羞恥を通り越して涙が出そうだった。


「はい、どうぞ…!」


俺は今自分がどんな表情をしているのか全くわからなく、顔が熱い事しか把握出来なかった。もうやけくそで口を開けてあげると、ミサキちゃんが俺の口の中にチョコレートを入れてくれ、噛むと思ってたよりも苦かった。さっき説明してくれたビターの奴を選んでくれたのかな、なんて思っているとミサキちゃんは「美味しい…?」と心配そうに聞いてきたので「美味しいよ、ありがとう」と微笑んで頭を撫でてやれば、嬉しそうに微笑み返してくれた。