今日は弟の誕生日なのだが、お父さんもお母さんもいないと言うことなので今年もケーキを買っておこうと思ったのに、主役のカオスが見当たらない。
どのケーキが良いか聞こうと思ったのに、どこ言ったんだろう。
ライブハウスや行きそうなところを回ったが、大体いそうなシュウくんやレイジくんの姿も見ていない。
もしかして、研究所!?と思い行ってみてお母さんに聞いてみると、どうやら今日はレイジくんの家でクリスマス兼カオスの誕生日を祝ってるらしい。


「あら、知らなかったの?名前」

「……全く知らなかったし…お母さんはカナトくんがいるから知れたんだろうけど、カオスがそんなこと話すわけないじゃん…」」


カオスに友達が出来たことと友達に誕生日を祝って貰えるようになったのは嬉しいことだが、何だかカオスがどんどん私から手の届かない所に行ってしまうような気分になり、何だか寂しくなった。
私もそろそろ弟離れしなきゃ、なんて思いながら研究所を去ろうとすると、お母さんに呼び止められた。


「当日に祝えない私とガッくんのためにありがとう、名前。これは私からの囁かな贈り物よ」


そう言ってお母さんに渡されたのは蝶の形をした紫色のコサージュだった。とても綺麗な色でラメが入っていてキラキラしている。
渡されたコサージュとお母さんを交互に見ると、お母さんは楽しそうに笑った。


「ちょっと早いクリスマスプレゼントだけど、どうかしら」

「嬉しいよ、ありがとうお母さん!」


私はさっそく髪の毛に付けようとするが、どこに付けたらいいかわからなく、お母さんに付けてもらった。
窓を鏡代わりにして映る自分を見て、とても嬉しくなった。


「そろそろ帰るね、お父さんとお母さんのご飯作っておかなくちゃ」


じゃあね、とお母さんに言えば優しく抱きしめられ頭を撫でられた。
研究所から出るとあたりはもう暗くなっていて、街頭と月明かりが道を照らしていた。
何処の家もケーキを食べてるのかな、と思ってたらやっぱり私もケーキが食べたくなったのでお店に行ってチョコレートケーキを1ホール買った。カオスが食べなくても私とお母さんとお父さんで食べればいいや。
店員さんに袋を渡され、少し重かったが崩れないようにゆっくりと帰った。