お母さんさんの変わりに研究所の地下に来てみると、そこには見知らぬ少年がいた。緑のバンダナに緑色の服で、普通の子とは何か違うような雰囲気を醸し出している。
「こんにちは」と挨拶してみれば、少年は驚いたような顔をした。


「お姉さんは誰?」

「私は名前。お母さんに頼まれて今日1日だけ此処で過ごすことになったの」


よろしくねと微笑めば、少年も元気よく返事をしてくれた。
名前はカナトくんと言うらしく、早速親睦を深めようとお腹の調子を聞き、空いているということなので家から持ってきた材料を使ってホットケーキを作ることにした。
私が一人で作っていると、カナトくんが隣でじーっと見てくるので手伝って貰った。カナトくんに生地を混ぜて貰っているうちにフライパンを温めて油を敷いたり皿を用意したりして、一生懸命混ぜる姿を眺めながら終わるのを待った。





「わあ、いい匂いだね!」


焼き終わってお皿に載せると、カナトくんは目を輝かせていた。
私はそんなカナトくんを微笑ましく思いながらバターやハチミツをトッピングし、テーブルに持って行った。
片付けは後回しにして食べ始めると、カナトくんはとても美味しそうに食べていた。そんなカナトくんを見て私も釣られて微笑んだ。


「名前は料理が出来るんだね、マリアとは大違い……」

「あはは…、お母さんの代わりに作ってたら苦手だったけど慣れちゃったよ」


お母さんが料理をすると地獄を見るので、小さい頃はお父さんと手を取り合って料理を作ったが、高学年になれば家庭科の授業が始まったので習ったことを生かして1人で作れるように頑張った。
まあ、今は一緒にご飯を食べてくれる人なんていないが、将来の為に料理が出来て良かったと思ってる。
カナトくんはホットケーキを平らげると、私にも味の感想とお礼を言ってくれた。


「ありがとう、カナトくん」


弟と同じぐらいなのにこんなにも違うなんて…、と何故か感動してしまった。これが普通なんだと思うけど。
でもそれが嬉しかったので、これからカナトくんにご飯を作って届けてあげようかな、なんて思いながら私は食べ終わった皿を片付けた。