真っ暗な部屋には扇風機の音と虫の声だけが響く。暑くて寝れない訳では無いが、どうにも目が覚めていた。こんな時は横にいる一騎に話しかけたい所だが、寝息が聞こえてくるので起こすのは可哀想だと思って何もせずにいる。
地味に喉が渇いていたので起き上がって麦茶を飲みに台所に行こうとしたら、服が何かに引っ掛かっているのがわかった。無理に引っ張ろうとしたがなかなか取れなく、何に引っ掛かっているのかとタオルケットを捲ったら一騎が俺の服を摘んでいた。寝ているのに何故力が入っているんだろう、そう思いながらまた引っ張っていると「何してるんだ」と寝ていたはずの一騎の口が開いた。俺はいきなりで驚き、少し声を出してしまった。


「びっくりした……。喉乾いたから台所行こうとしてら一騎の手が……」

「勝手に何処か行こうとしてたからな」

「なにそれ……勝手に飲み物ぐらい飲ませろよ……」

「じゃあ俺も行くよ」

「……やっぱいいや」


再び布団に寝転がると、逆に一騎が起き上がった。俺の腕を掴み、起きろと言わんばかりに引っ張る。


「俺が喉乾いたからさ」


一緒に来いよ。
俺はめんどくさいなと思いながら起き上がり、一騎と一緒に台所に向かった。
棚からコップを出し、一騎は冷蔵庫から麦茶を出す。コップ並々に注がれ、普段は半分ぐらいしか注が無いくせに、と思いながら半分を一気飲みした。
もう半分を飲もうとするとコップを一騎に取られ、全て飲んでしまった。何故と疑問に思ったが、そう言えば一騎も喉乾いていた事を思い出して一人納得する。


「なんかお腹空かないか?」


腹をさすりながらいう俺に、一騎は何か食べ物はないかと冷蔵庫を見る。


「ソーセージとかあるけど…」

「それくれよ」


一騎から魚肉ソーセージを貰い、封を破って食べ始める。
普段は一騎の料理の具材として食べているため、そのまんまで食べる機会があまりなかったからか少し新鮮に感じた。
とっとと食べて部屋に戻ろうとすると、口からはみ出てた部分を一騎に咥えられ、口からスッポリとソーセージが抜けてしまった。俺が唖然とする中、一騎は俺から奪ったソーセージを食べている。


「え…俺のソーセージ……」

「小腹が空いてる時に食べると美味しく感じるな」


水道で軽く手を洗い、何事も無かったかのように振る舞う一騎。魚肉ソーセージを食べてしまったせいで余計にお腹が空いたが、朝まで我慢しようと思い、そのまま2人で部屋に戻った。