「久し振りだねキング。あ、今はスペードだっけ」
赤い絨毯と煌びやかな宝石に囲まれた部屋で対面した俺らは昔のように軽率に言葉を交わすこともなく、ただお互いの様子を見ていた。 テレビでちらっと目にはしていたが、スペードとして会ったのは今回が初めてだ。このお屋敷に予告状が届いたと聞きつけて潜り込んでみたものの、俺が着いた時にはもう周りの警備員は床で寝ていた。そのお陰でここまで難なく来れたが、トラップが少し厄介だった。まあ、かすりもしなかったが。 警戒していたスペードは俺だと気付くと少し警戒を解き、「久し振りだね」と言った。
「もしかして君もこれを盗みに来たのかい?」
「いや、俺は怪盗業から足を洗ったんだ」
そう言うと、スペードは驚いた表情をした。 スペードとは一緒にダンプの元から逃げ出し、シルバーハートの弟子として一緒に学んできたが、数年前から独り立ちをしたと思わせて怪盗業を辞めていた。
「なんで怪盗をやめちゃったんだい?」
「主が怪盗嫌いなんだよ」
「主…? 君は誰かに雇われているの?」
「俺は元から雇われていただろう?」
君と逃げ出したあの船の持ち主に。 指輪をつけている手を口元に持ってきて見せつけると、指輪を見たスペードはさらに驚いた。君たちを狙っている組織の一員になった俺を見て、君はどう思うのだろうか。
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