エボット山から突き落とされたのは覚えている。
目を開けると、そこには黄色い花があった。
体のあちこちが痛く、自力で起き上がるぐらいに回復してなかったので暫くそのままでいた。
俺がいるここは自然の音すらしない空間で、自分の息だけが聞こえる。
ここまで無音だと少し不気味に感じ、俺は体が動くのを確認するとゆっくりと起き上がった。
足や腕を見れば擦り傷があるだけで、大きな怪我はしていない。花の上から退き、あたりを探索しようとしたが、まだ体中が痛かったのでその場に座り込んだ。
這いつくばって近くの壁に行くと、寄り掛かって体を休ませる。


「だ、大丈夫…?」


誰かに声をかけられたが、相手の姿を見るほど俺に力は残されていなかった。
目蓋が一気に重くなり、完全に閉じ切る前に目の前に現れた姿を見たが、それは人間ではなく服を着た獣だった。


「ママ! 起きたよ!」


再び目を開ければ見知らぬ空間が視界に広がり、あたりを見回すと俺が寝ているベッドの側には人間の子供と先程見た獣がいた。
獣は俺を見た後慌てて部屋から出ていくと、部屋には俺と人間の子供が取り残された。


「お前はここにどうやって来たの?」

「……捨てられたんだよ」


人間の子供に聞かれ、俺はそう答えた。
実際の所、詳しい事情は知らない。しかし、エボット山の穴に俺を落とすぐらいなので殺すつもりだったんだと思う。
人間の子供な興味無さそうに「ふーん」と言った。会話はそこで終わってしまい、なんだか少し気まずい雰囲気になった。


「君の名前は…? 俺は男主」

「……」


ガン無視されてしまった。さっきより気まずくなってしまい、俺は失敗したと思った。
すると部屋のドアが開き、さっきの獣と大きな獣が入ってきた。
大きな獣は人間の子供を下がらせて俺に近づくと、俺に触れてきた。
俺は身構えると、大きな獣は「怖がらないで、大丈夫よ」と言った。


「何処か痛い所はないかしら? 今先ほど焼いたバタースコッチシナモンパイを持ってきてあげるわね」


頭を撫でられ、大きな獣は部屋から出ていった。
唖然としていると、獣がに優しそうに微笑みながら俺に話しかけてきた。


「君の名前は? 僕はasriel、こっちはchara」

「……男主」


獣の方、asrielはとても優しそうで、人間の方のcharaと言う方はニコニコした顔だかどこか恐ろしかった。
それが彼らの第一印象であり、俺らの出会いだった。





「本当に良いのか? お前さんの友人だろ」

「あれはcharaじゃない。だってcharaは既に死んだんだ」


今目の前に立ち塞がるのは、friskという器を操りcharaと名乗る何かだった。