クラスの枠を超えて学年の中で港くんと鮎川くんは女子に大人気だった。
私も周りにつられて鮎川くんの事が好きだった時期があったが、今は小さくて可愛い小鰭くんの方が気になっていた。

昼休み、男子達が校庭に遊びに行く中私は図書室に行こうとすると、ゆかりちゃんに呼ばれて強制的に恋バナをする輪の中に入ってしまった。
皆が隣のクラスのあの子とその子が付き合ったとか話をしている中、私はあまり聞いていなく上の空だった。
正直誰が誰を好きだとか興味無いし、2人がくっつくようにわざとらしくするのも好きじゃない。
女の子ってめんどくさい、と思っていると、ゆかりちゃんに名前を呼ばれて私は我に返った。


「名前ちゃんは結局さ、鮎川くんと小鰭くんのどっちが好きなの?」


いきなりそんなことを聞かれ、私は一気に顔が熱くなるのを感じた。
誰にも鮎川くんと小鰭くんが気になっていることを言ったことがないのに何故わかったんだろう。私は返答に困った。


「な、なんで…!? 別に二人のこと好きとかじゃないよ、可愛いなって思うだけで……」

「最近は鮎川くんより小鰭くんのこと見てるよね」


沙紀ちゃんが言う。
確かに、最近は無意識に小鰭くんのことを見ている事が多くなった。
私はなんだか恥ずかしくなって顔を隠すように下を向く。
すると隣にいたみりあちゃんに「可愛い〜〜」と言われ、顔を覗かれる。


「もー、別にどっちも好きじゃないから!!」


必死の言い訳をしてる中、私の顔は真っ赤なんだろうなと思った。
ゆかりちゃん達はそんな私を見てニヤニヤしながら納得した様子だった。
これからは小鰭くんのことでイジられそうだな、と少し気が重くなる。
それから暫く話をしていると昼休み終了のチャイムが鳴った。
私達は椅子を元に戻して五時間目の準備をする中、校庭に遊びに行ってた男子達がゾロゾロと教室に入ってくる。
隣の席の鮎川くんも戻って来て席に座ると、いつもは先生が来るまで斜め前の港くんと話をしているはずなのだか、今日は大人しく席に座っていた。
喧嘩でもしたのかな、なんて様子を伺っていると、私の視線に気付いたのか鮎川くんは私に話し掛けてきた。


「なんか用?」

「あ、嫌、別に……」


よく見れば見るほど改めて鮎川くんはカッコイイと思う。
あまりジロジロ見てるとまた話しかけられそうなので、前を向いて静かに先生が来るのを待った。
それから間も無く先生が来ると、嫌いな算数の時間が始まった。
最初に例題を皆で解き、次に練習問題を解く。
私は教科書に折り目きっちりつけて問題を解こうとした所、机をトントンと叩かれた。


「ごめん、教科書見せてくれない?」

「いいよ」


私は教科書を真ん中に置くと、鮎川くんにお礼を言われた。
教科書を見る度鮎川くんが視界に入るので少し気になってしまう。
やっぱり鮎川くんの方が好きかもしれない。
私は我に帰ると問題を解き始めた。