主は突き刺されそうなほど鋭い目付きをしている。
だが性格は餅みたいに柔らかく、僕らと言う餡を暖かく包み込んでくれる優しい人だ。
そんな主はまだ勉学に励むご年齢らしく、昼の間はがっこうという所に行って学んでいるらしい。
是非近侍である僕も警護を兼ねてご一緒に行きたかったが、やんわり断られてしまった。
それで主が本丸で過ごす時間は限られてしまっているが、その日近侍である刀には唯一主と連絡の取れるすまーとふぉんと言うのを渡される。
それを使えば主からの言伝を見れたり聞けたりし、主の変わりに指示を出来て、それで主と直接合わなくてもこみゅにけーしょんが取れるのだ。


「平野、今日は主から連絡はありましたか?」

「いえ、何も来てません」


僕と一緒に主の部屋を掃除する前田は「そうですか……」と少し落ち込んだように言った。
前田はこのすまーとふぉんにとても興味を持っていて、毎日のように主からの連絡があったかと聞いてくる。
主からの連絡を気にしてるというより、すまーとふぉんの方を気にしている感じだった。
僕が操作する度横で目を輝かせながら見てきて、主から許可を頂き前田に少しだけ触らせようとしたが拒否されてしまった。
どうやら前田は見ているのが好きらしいので、操作する度は前田の近くでやるようにしている。
ちりとりの中にごみを入れ、立ち上がろうとした所で首から下げていたポーチが震えた。
主からの連絡かと思って床にちりとりと箒を置いてすまーとふぉんを開くと、写真が送られて来ていた。


「主君からですか?」

「はい、どうやら写真のようです」


写真に触れると、大きくなる。
そこには、熊のぬいぐるみが二つ映っていた。
手前に紙があり、焦茶色の方は平野、茶色の方は前田と矢印が向けられていた。
僕はそれを見て少し笑うと、横にいた前田が「何が写ってるんですか?」と興味津々に聞いてきた。
僕は前田にすまーとふぉんの画面を向けると、前田も写真を見て微笑んだ。


「主も結構可愛らしいことするんですね」

「そんな。主君はいつでも可愛らしいお方ですよ」


僕らは再度写真を見て微笑んだ。