「主は最近弟達に会っていないと聞きます。何か訳がお有りなのでしょうか」


それは、いきなりの質問だった。
一期一振の方から話があると言われ、部屋に訪れられては神妙な面持ちで聞かれた。
弟達、とは多分前田と平野の事だろう。確に、最近は一期一振を近侍にしてから前田と平野に会う機会はすっかりって言うほど無くなってしまった。
てっきり前田達の方から近侍では無くてもひょこひょこ遊びに来てくれると思ったが、誠実な性格な故僕の方から言わないと来てくれないらしい。
しかし実は、2人の優しさに甘えてしまうことをやめるために自ら会うのを控えているって言うのもある。


「弟達はきっちりしている故、遠慮して思っていることを素直に言えない子達でもあります」

「うん、わかってる。でも今はまだ自ら会いに行けないから……」


てんこ盛りの書類の山から一期一振に視線を移しながら言うと、神妙な面持ちの一期一振だったが、そんな俺を見て少し笑った。
さっきまで感じた微妙な空気は一気に消し飛び、僕も笑みを浮かべた。


「そうですね、だから私を近侍にしたのでしたね。……私は弟達より甘くありませんよ」


その一期一振の笑みには前田や平野と重なる部分があったが、2人には感じない威厳があった。
2人がもし成長したら兄みたいになるのだろうか、そんなことを考えながら仕事をしていたらいつの間にか手が止まってしまい、何回も一期一振に指摘された。
いつもこんな事ばっか考えて手が止まるから仕事が進まないんだな、と思っていたらまた指摘された。