「見つけた」


聞き慣れた声が背後から聞こえたので振り返ってみれば、そこには姉さんがいた。
いつもと変わらない格好だか少し雰囲気が違く、上にはコートを羽織っていて揃えられている髪の毛は艶やかに靡いていた。


「開会式で章太さんの褌姿見れるかもって期待したのにいないんだもの……」

「あれは運動部がメインだから…」


ショボンと効果音がつきそうな姉さんの落ち込む姿に僕は少しだけ申し訳なくなった。


「もう! お姉さんを騙したわね? 罰として私を案内しなさい!」


可愛らしく怒る姉さん。
キーチと回ろうとしていたが約束していたわけじゃないので姉さんと回ることにすると、姉さんは子供らしく喜んだ。
僕の方が弟のはずなのに立場が逆転している気がするが、いつもの事なので気にはしない。


「章太さんが迷子にならないように手を繋がないとね」


僕の右手を握る姉さん。迷子になるのは姉さんの方だと思うけど…。
流石に知り合いが多い中で手を繋ぐのは恥ずかしく、軽く解こうとすると更に強く握られた。


「さ、流石に学校では……」

「そんな……章太さんが反抗期だなんて……お姉さん悲しいわ…しくしく……」


泣き真似をし始める姉さんに、周りの視線が集まる。
気まずくなり、僕はしょうがなく思って姉さんの手を握れば、姉さんは泣き真似を一瞬でやめた。


「さて、行きましょう!」


一気に元気になった姉さんは僕の手を引っ張り歩き出し、僕はまあいいかと思って姉さんについて行った。