朝からずっと寝ては起きてをくり返していた。
頭が痛いわけでもお腹が痛いわけでもないが、疲れが溜まっていたのか、体はだるく何をするにもやる気が起きなくてずっと布団から動いていない。
光忠に「日頃の疲れが溜まってたんだろう。ゆっくり休んでね」と言われ、今日一日だけ前田と平野が俺の身の回りのことをしてくれる世話係になった。
対していつもと変わらないと思ったが今日の2人は僕につきっきりで、起きる度に2人が布団の横にいるので監視されているようで少し怖い。


「お目覚めですか」


前田が僕の顔を覗きながら言った。
僕は寝起きでまだ頭がぼーっとしていたので、少し間を置いてから返事をした。
部屋の中を見渡せば前田しかいなく「平野は何処に言ったの?」と聞くと、襖が開いてお盆を持った平野が入ってきた。


「小腹が空いたので燭台切さんにお握りを作ってもらってました」


起き上がって平野の持っているお盆を見れば、ふっくらとして美味しそうなお握りが4個と急須とコップが3つあった。


「美味しそうだね」

「主も食べますか?」


平野に言われ、お腹が背中とくっついてしまいそうなぐらいお腹が空いていたので食べることにした。
海苔を1枚取りお握りに巻いて一口食べると、いつもと変わらない塩とご飯の味がいつもの何倍も美味しく感じた。
2人は何の具が入っていたのかと聞いてみようと思ったが、二人共酸っぱそうな顔をしていたので全部梅だと悟った。
全部食べ終わると、平野が注いでくれたお茶を飲んで落ち着く。


「そう言えば体調の方は大丈夫ですか?」

「…ああ、うん。僕のお守りをさせちゃってごめんね」


微笑んで2人の頭を撫でてやれば、2人は顔を見合わせてクスリと笑った。
僕は何故2人が笑い合ったのかわからなく首を傾げると、前田が言った。


「一人占め、ではないですが主君との貴重な時間を過ごせて僕達は嬉しいのです。いつも忙しそうなので……」


「兄弟に自慢できますね」と前田が平野に言っていて、そんな事で自慢できちゃうのか……と少し気分が沈んだ。
もっと皆と過ごす時間を作ろう、と思った。