時刻は夜中の2時を回っていて、僕の眠気はピークに達していた。
なかなか終わらない報告書の紙は机の上に散らばっていて、もう紙自体を見ることすら嫌になっていた。
少し休めば少しは楽になるだろうと思い机に伏せて目をつぶれば、一気に体が休まる気がすると同時にそのまま眠ってしまいそうだった。
少し、少しだけ休むだけ……、そう思いながら体の力を徐々に抜いていった。


「主君」


いきなり前田の声が聞こえ、僕は驚いて体が大きくビクついた。
起き上がって振り返れば、少し開いている襖からパジャマ姿の前田と平野がこちらを覗いていた。
僕は2人に「どうしたの?」と聞けば、平野が先に口を開いた。


「厠に行った帰りに主の部屋に灯りがついているのがわかりまして、様子を見に来ました」

「何をしていたんですか?」


2人は中に入ってきて僕の布団の手前で正座になった。
僕も前田達の方を向き、テーブルの上にある報告書を適当に取って見せた。


「政府に渡す報告書書いててさ、数日サボっちゃってて明日?今日?に出さなきゃいけなくて……」


へへへ…、と笑った。2人は少し呆れた様子だったが、優しい言葉をかけてくれた。
流石おかっぱ藤四郎、優しすぎて涙出る……。
僕は後一枚書けば終わりなので「早く寝なさい」と2人に言うが、顔を見合わせ「いいえ」と声を合わせて言われた。


「僕達も手伝います」

「三人でやれば早いと思うので」


2人にそう言われたが、僕は頑なに断った。
これだけで終わると書き途中の紙を見せ、「君達をこんな時間に働かせちゃうと僕が怒られちゃう」と笑いながら言って2人を部屋から無理やり出した。
2人は納得のしてなさそうな顔をしていたが「おやすみなさい」と言って部屋に帰っていった。
僕は微笑んで返し、残りの報告書を片付けることにした。