「昔に比べては筋肉付いたよね」


私は諏訪の二の腕や足などを触りまくり、筋肉の付き具合を把握するかのように見せかけてただベタベタ触っていた。
諏訪は何をしても筋肉が付かなく、太らない体質なので男子の中ではヒョロヒョロの部類に入っていた。
それに普段はメガネを掛けていて傍から見たら物静かでガリ勉な少年に見えるが、実際は様々な運動部に入っては人1倍努力をして逞しくなろうと頑張る人だ。
中学で身長が伸び始めてからは筋肉も少しつき、3年生の頃には学年の中でもガタイが良い部類に入っていたが、高校でラグビー部に入ってからは諏訪が周りより少し細く小さく見えた。


「努力の成果が出てるよ」

「……そんなことない」


諏訪は少し眉間にシワを寄せた。
毎回筋肉の話をする度、諏訪は毎回眉間にシワを寄せる。
その顔を見る度、この話は2度と口にしないと思うのだがいつも忘れてしまう。
前に諏訪の愚痴を聞いたことがあった。
協調性がないただのヤンキーかと思ったら隠れて練習していた、俺は毎日部活で真面目に練習していて、自主練もやっている。なのに何で俺は……!
それは愚痴と言うよりかは嫉妬に近かった。諏訪な私に愚痴を溢す度謝ってくる。
違う、私は諏訪から他の言葉が聞きたい、もっと私を頼って欲しい……!!
しかしそんな私の想いは口に出せないまま泡となって消えた。