小学生の時から付き合っている彼氏がいた。
中学の時は違う学校であれど一緒に登校や帰宅をしたりしてある程度接点があったが、高校に入ってからは全くってほど関わりがなくなってしまった。
彼は県で一番頭の良い高校に行き、私は底辺の高校に入った。
私は彼に進む高校を教えていない、と言うか頑なに教えなかった。
LINEの垢もケー番も全て変え、今更彼にどんな顔をして会えばいいかわからなく、自然消滅して欲しかった。
彼のことは今も好きだ。小学生の時彼から貰ったキーホルダーを今でも大切に保管している。
それを見る度元気をもらっていたが、今では余計に気分が下がるだけになってしまった。
忘れようと思い新しい彼氏を作ろうとしたが、どうしても目の前にいる男と彼を比べてしまって作る気が失せてしまう。
私は自分で思っているよりも彼のことを引きずっている。
今彼と会ってしまったら惚れ直すんだろうか、それとも逃げたくなってしまうのだろうか。
考えてみたは良いものの知りたくはなかった。

ある日、バイト先のカフェに頭の良い学校のブレザーを着た学生が来た。
私は特に気にもせず呼ばれたので注文を取りに行くと、それは身に覚えのある顔だった。
丸メガネに少し長くなったと感じられる揃えられた髪、緑の小物に思い付くのは彼しか居なかった。


「お久しぶりですね、名前さん」


私は一気に身体が熱くなり、変な汗がにじみ出てきたのがわかった。息の仕方を忘れてしまい、意識的に息をし始める。
目の前にいる彼は私のことをじっと見てくるが、私は彼の目を、顔を1度も見れなかった。
私は「ご注文は」と平然を装いながら聞き、彼は「ホットコーヒーで」と言った。
私はできるだけ彼を視界に入れないようにし、仕事に集中した。
そろそろ上がる時間なので早く時間が過ぎることを願ったが、そのときだけはいつもよりも長く感じた。


「やっと終わったんですね」


裏口から店を出ると、そこには彼の姿があった。
昔よりも一段と格好良くなっていて、どんなイケメンを売りにしている芸能人よりもカッコよく思えた。


「少し僕に付き合ってくれませんか?」


そう言った彼のオーラは私に有無を言わせないようだった。
私は素直に彼について行きながらどこに行くんだろう、何をするんだろう、と不安ばかりを募らせた。