トップスの中にはコモンズを雇い、報酬に金や食料を貰える仕事みたいなのがある。
肉体労働から奴隷紛いの物、中には夜の相手なんて酷いものまである。
俺が今いる孤児院では最近食いもんが少なくなってきたため、俺が体を張って皆の分の食料を稼ぐためにこうしてトップスの住宅街に出向いている。
普段は入っただけで適当にケチをつけられて務所行きだが、きちんと許可証を貰っている。
俺らコモンズには仕事内容や雇われ主が選べなく、全て決めるのはトップスだ。
俺は今、雇われたトップスの家の前にいて、インターフォンを押して雇い主が出てくるのを待っている。
緊張と恐怖が混ざり合っていつもの俺じゃないみたいだ。


「君がユーゴくんかな」


ドアを開けて出てきたのは若いお姉さんだった。
もももももしかしたら俺お姉さんの夜の相手とか……!とか思いながらも中に案内された。
リビングに連れてかれ、お姉さんに「座って」と言われ、お姉さんが座ったソファーの正面に座った。


「仕事の内容なんだけど」


俺は息を呑む。
過酷な肉体労働か、楽な仕事か。


「私の家にいてくれるだけでいいの」

「は?」


思わず声が漏れた。
やべっ、こんな楽すぎる話捨てるわけにはいかねえ、と思い、俺は背筋をピンと伸ばす。


「報酬はお金以外ならなんでも用意する。欲しいモノがあったらなんでも言ってね」

「は、はい!!」

「後、敬語もいらない。私名前って言うんだけど呼び捨てで構わないから」

「お…おう……」


やばい。めちゃめちゃいい所に当たった。
要するに仕事の内容は俺がこの家にいるだけらしい。
週に最低一回は来なくちゃいけないらしく、日時は特に決まっていないらしい。


「暇かもしれないけど家の中の物なんでも使っていいから。もしお腹がすいたとかなら言って欲しい」

「おう、わかったぜ!」


俺はガッツポーズをして言った。
俺の雇い主になった名前はそんな俺を見て微笑んだ。
さっきまで無表情だったが、微笑んだ顔をみてこの人は悪い人じゃなさそうだなと直感的に思った。
と言っても、本当にやることがない。
リビングにはキッチンとテーブルと椅子。ソファーにテレビ。他にも部屋がありそうで、広々とした空間で一人暮らしでは広すぎるぐらいだ。
目の前にいる名前はさっきから俺のことをじろじろと見てきて、少し居心地が悪い。
そんな暇な中約束の時間まで過ごし、帰り際に大きな袋を貰った。中を少し覗けば、大量の缶詰とお菓子が袋別に入っていた。俺は驚愕し「こんなに貰えんのか!?」と叫んだ。


「初回だから何を渡せばいいかわかんなかった。孤児院って聞いたしお菓子好きかなと思って……。欲しいものがないときは当分そんな感じだけどいいかな」


名前は少し困ったように言った。俺は名前の顔を見て精一杯お礼を言った。すると名前はそんな俺に少し驚いた様子をし、ふわっと笑ってくれた。