「△○……」

「私はダンガンロンパに興味は無いけれど、苗字くんがオーディションを受けるなら私も受けるわ」


△○は俺の手を両手で掴んで微笑んだ。
ダンガンロンパのオーディションは俺がファンであり、いつかやる側になりたいと思って幼なじみの△○には内緒で応募した。
△○自体はダンガンロンパに興味がなく、逆に嫌っていた。
なのに何で彼女は……。俺は不思議に思った。


「お前ダンガンロンパに興味なんか無いじゃないか……、何で……」

「……良いじゃない、受ける事に損は無いわ」


手を握る力が強くなった。
その手は少し震えていて、いつもの△○からは意外な反応だった。


「……貴方に人殺しをさせたくないし、ましてや死んで欲しくないわ。一緒に受かるかどちらかが落ちるかましてや受からないか、結果はわからないけど貴方と一緒の道を歩みたいの」


△○は表情を暗くさせて俺の手を離した。
家族ぐるみで△○とは仲が良く、何をする時も△○と一緒だった。
気が強いが大人の女性らしい彼女の振る舞いでとても人望が厚く、△○と幼なじみというのが地味に自慢だった。
そんな彼女が俺と一緒の道を歩むと言ってくれ、俺は改めて△○が好きだな、と思った。
俺は先程△○がやって来たように、△○の手を両手で掴んだ。


「…ありがとう△○。……まあ、受かんないと思うけどさ」


笑いながらそう言うと、△○は「そうね」と一緒に笑ってくれた。
俺はダンガンロンパのオーディションに受かることよりも△○の笑顔を見れる方が嬉しいと気付いてしまい、△○の言葉を聞いて受ける気が失せてしまった
でも応募はしてしまったので受けるだけ受けようと思った。





「私は動機ビデオを見たの。私は国民のためにこの才囚学園から出なくては行けないの」


東条さんとは星の研究教室の前で会い、やけに東条さんが殺気立っていたので話を聞いたところ、星に用があったようだった。
近くに俺の研究教室があったのでそっちで話を聞くことにしたら、彼女の動機ビデオの内容を知った。
その話はスケールがデカすぎて想像が出来なかった。


「だから生きることに無気力な星を狙ったのか」

「!……そこまでわかっていたのね」

「バリバリ殺気立っていたからな……」


俺は彼女に背を向け、飲み物を用意しようとして設置されている冷蔵庫を開けた。
しかし、俺の研究教室に設置されている冷蔵庫に飲み物なんて入っているわけがない。
中には輸血パックしかなく、何もしようがない。
すると背後に激痛が走った。
俺は大体状況を理解していた、だってそのために東条さんに背後を向けたのだから。


「っ……どうせなら一発で、して欲しかったぜ……っ」

「今の私に背を向けるなんて自殺行為だったわね。この話をした後で何もなかったで済むと思ったのかしら」

「っ……△○……」


東条さんは近くにあったデジタル式の体重計を持って大きく振りかぶった。